付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「極北の狩人」 椎名誠

2009-06-17 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 作家・椎名誠がテレビドキュメンタリー取材班と共にアラスカのエスキモー、カナダのイヌイット、シベリア・チュコト半島のユピックと、極北の狩猟民族を訪ねて回った旅の記録。
 やはり椎名誠の旅行記は面白い。ぐだぐだだったり脇道にそれっぱなしのように見えつつも、自分が観たいもの、見てきたものがしっかり書かれ、行った先に住む人の人々の衣食住に言及され、また同じ旅先について書かれた先人の著作や探検の記録にまで触れられている。だから、たとえぐだぐだでもしっかり着地するのですね。
 さて、本書では、極北の狩猟民族をひとくくりにして「イヌイット」と呼ぶことはしていません。彼らはそれぞれエスキモーであり、イヌイットであり、ユピックです。
 日本では「エスキモー」というのは「生肉を食う人々」という意味だから差別語だとして一律に「イヌイット」と言い換えてしまうのですが、現地に行ってみれば本人たちが「自分たちは生肉を食べるんだからエスキモーであたりまえだろ」という認識なので、他人が勝手に差別語として別の言葉に言い換えてしまう方が差別というか失礼というもんですね。対象についてよく知らないまま勝手にラベル張ってるわけですから。

 さてさて、一行はアラスカ最北端のポイント・バローで寿司35貫盛りを食べたのを皮切りに、極地であれこれ食べて回ります。物資を空輸に頼らざるを得ない極地ではとにかく何でも高い。マクドナルドだって価格は倍額。レストランは不味いか大味で飽きてしまう。そうすると、ひたすら自炊でカレーライスということになり、決まった仕事のない著者がひたすら調理担当としてカレーライスをつくる光景に笑ってしまいます。
 もちろん刺身を食べる日本人ですから、取材先の人々と同じものも食べます。さすがにいくら動き回るサプリメントといってもアザラシの寄生虫は遠慮したいけれど生肉は平気。カリブーでもイッカクでもセイウチの醗酵肉でもアザラシのスープでも大丈夫。シベリヤで食べるホヤは美味しかったそうです。
 犬ぞりの練習をしてみたり、ホヤ採りをやってみたり、どこでも行ってみよう、なんでもやってみよう、見てみよう、食べてみようという精神にあふれた旅行記でした。それが旅行記にいちばん大事なことですね。

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「レジンキャストミルク5」 藤原祐

2009-06-17 | 超能力・超人・サイボーグ
「お前は硝子を泣かせた。それだけでも殺すに足る」

 2学期が始まり、奏と逆絵の津久見兄妹が転校してくる。そして彼ら双子は晶たちの予想通り、虚軸【ライ麦畑の墜落死体】だった。
 しかし、それも【無限回廊】の計画の一部に過ぎない。これまでにない規模の日常の浸食が起こり、窮地に追い込まれた城島晶と【全一】の前に、晶の父・城島樹が姿を現す。

 これまで詭弁と欺瞞と偽善で相手を容赦なく奈落に叩き落としてきた城島晶ですが、ここしばらく旗色が悪くて苦戦しています。相手が悪いと言えば悪いのですが、先手を取られ、一方的に言われまくってます。主人公が日常を守ろうとすればするほど、日常の方が離れていく悲劇。せめて硝子だけは手放さないようにして欲しいもんです。

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