付け焼き刃の覚え書き

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「スター・トレック4~故郷への長い道」 ヴォンダ・マッキンタイア

2009-06-05 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「可能性が二つあったらつねに、美しいほうを、審美的に好ましいほうを選びなさい」
 ある女性教授のことば。

 虚空より地球に接近する正体不明の巨大探査船は宇宙連邦からの呼びかけを無視し、周囲すべての動力を停止させると同時に地上に異常気象をもたらす。このままでは地球は大洪水によって滅亡してしまう。
 探査機の信号を分析したスポックは信号がザトウクジラへの呼びかけだと分析、探査機を生み出した文明はクジラ類のみを地球の支配種族として認識していると結論づけた。だが、地球の大型海棲ほ乳類はすべて死滅している。
 そこでカークたちは23世紀から20世紀にタイム・トラベルしてクジラを連れてこようとするのだが……。

劇場版スタートレックの4作目の原作というかノヴェライズで、好きな作品の1つ。まあ、クジラ大好きのレナード・ニモイが監督なだけあって反捕鯨色が強くて日本人には複雑なんだけれど、『スター・トレック』だから仕方がないよね。
 つまり、『スター・トレック』というのはジーン・ロッデンベリーの楽観的な理想主義によって作られた作品であり、人種差別や男女差別も根強く冷戦真っ直中の1960年代の話なのに宇宙船エンタープライズ号のブリッジには黒人女性やロシア人、アジア人もいれば異星人だっています。男だ女だとか民族どころか種族も関係ない人々が1つの船で平和のために航海するという話なのですね。同じくロッデンベリーが手がけた『ザ・ネクスト・ジェネレーション』においては仇敵クリンゴン人ですら迎え入れてしまう。ならば、クジラの問題くらい気にしていても仕方がない。
 本編のタイムワープで20世紀のサンフランシスコにやってきた未来人たちの珍道中を楽しみましょう。

『ジリアンは不思議な思いで、あたりをじろじろ見回した。自分はいま、星から星へと旅のできる宇宙船の中にいるのだ。人種や性別を気にせず、仕事と生活を共にしている人たちの中に……』

 たぶん、このシーンが小説版のクライマックス。

 訳者の斎藤伯好という方は、テレビシリーズのノベライズから担当しているベテランではあるけれど、テレビシリーズの日本語台本を意識しないで訳されているのでそこのところが惜しい。やたら丁寧口調のボーンズなんて、ドクターじゃないやい! テレビシリーズで「ドクター」と呼ばれているのに馴染んだ身には、いくら俗語でも(辞書をひいた)「bones」と呼ばれてもピンときません……。(2009/06/05)



 リマスターのDVD版も購入。このDVDには「『カーンの逆襲』における設定矛盾の謎」を解明する証言も収録されているし、面白いことは面白いけれど反捕鯨色の強いグリーンピースの広報ビデオ的な構成にはやっぱり辟易しますね。小説版より強調されているので、辛いわ。付録の特典映像にまでグリーンピースを出しなさんなって。
 口直しに同人漫画『あとりえラナ作品集2』を引っ張り出して、収録の『まんが宇宙大作戦~危険な過去への旅』を再読。こちらは「一方的倫理観を押しつけ、他民族の食習慣に干渉する行為は非論理的です」という話なのです。(2009/07/20)

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