付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「毒きのこ・絶品きのこ狂騒記」 小山昇平

2010-03-15 | エッセー・人文・科学
「人知れずたくさん採って、皆に見せびらかして食べたい!」

 日本に自生する茸は6000種とも1万種ともいわれているけれど、正式に確認され分類されているのはせいぜい3000種。キノコ研究だけでは食べていけなくて研究者が少ないせいで研究が追いつかないのが原因のようですが、分類されているはずのものでも、市販のキノコ図鑑などでは図版の間違いどころか食用と有毒の区分を間違えているモノさえ少なくないという恐ろしい話です。
 死ぬのが怖ければ、お店で売っているキノコを買うか、保健所で食用かどうか確認してもらうしかないのですが、保健所も役所の統廃合で閉鎖されたところが多く、著者のような在野のボランティア専門家のもとにはシーズンともなると山のようなキノコが持ち込まれ外出もままならなくなるんだとか。
 そんなキノコをめぐるエピソードを集めたエッセイ集です。

 キノコを食べて死んだ人やキノコを取りに行って滑落死した人もいるし、専門家が毒だと言っているのに、半可通のマニアが食えると言って腹一杯食べたあげく一家そろって中毒することもあります。かと思えば、未分類のキノコを調べるために専門家が集まっての試食会をすることもあるのです。試食会ではキノコを細かく刻み、生で食べるか、加熱したものを口にするか、さまざまに調理したどれを食べるかでクジ引きは真剣勝負。取材に来たテレビ局もついに放映を断念する始末。
 外国人はマツタケの匂いを臭いというけれど、日本人だって山ほど採ってきてしまうと逆に臭くてたまらなくなるものなんだとか、真面目な話や悲劇もあれば悲喜劇もあり苦労譚もありという1冊です。

【毒きのこ・絶品きのこ狂騒記】【山の中の食欲・物欲・独占欲バトル】【小山昇平】【菌類学会】
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