化物に変化しなくてもウィルスに感染した者が送り込まれる隔離街。ところが、中に隔離されたはずの者たちは自由自在に隔離地区の内と外を出入りしていて、どうやらイルの増殖を企てているらしい。その隔離街の集団が、なぜか凶悪無比の暗黒のイルを倒そうと動き出した。そしてその黒金のイルこそ、楓の母親を殺した仇敵だった……。
互いの感覚のみならず肉体までリンクしてしまった、楓と明日花の剣戟伝奇小説。
主人公が辛いこと苦しいことを笑い飛ばすようなタイプではないので、戦いの厳しさや信じていた者に裏切られた悲しみなどが、互いの肉体と精神がリンクした事による戸惑いやトラブルと今ひとつしっくりこない。ラブコメになりそうだけれど、なっちゃいかんよなあと思うけれど、単純に主人公側に与えられた枷というには微笑ましいので、どう読んで良いか戸惑います。もう少し伝奇かラブコメかどちらかに寄ってもらえると嬉しい。
十六夜京也や工藤明彦みたいな菊地作品のヒーローならしっくり来ると思うけれど、楓と明日花の未熟さを見守るのが楽しみ方なのかもしれません。
弱点を弱点ではなく、長所だと考えろという師匠は、こういう伝奇小説にはお約束。今後の活躍に期待。
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