
漁を生業とする半円海ノ城砦において、女は音楽などにかまけるより先にやるべきことは幾らでもある。城砦ノ太守でもある厳格な父親と口うるさい母親によって音楽を禁止されたメノリは、手の怪我で竪琴も弾けなくなってしまうのだが……。
パッと見でファンタジーなのだけれど、実はSFだという『パーンの竜騎士』の邦訳4冊目であり、ジュブナイル系サイドストーリーである、「竪琴師ノ工舎」三部作の1冊目。
宙より降り、地上に落ちればすべてのものを焼き尽くし喰らい尽くすという糸胞。惑星パーンに移民した人々が銀河文明を忘れ、前近代的な技術レベルにまで落ち込んだのも糸胞が原因。その糸胞と戦う竜と竜騎士の物語が本編ですが、こちらはその中で重要な役割を果たす竪琴師の工舎を舞台にした少女の成長譚。
無理解で厳格な両親に育てられ抑圧されてきた少女が、居場所を見つけるまでの物語です。70年代少女マンガの王道パターンと指摘されることもありますが、いわれてみればそのまんまです。マスコット・キャラも登場するし。
竪琴師は音楽家で吟遊詩人。ただ、この世界での竪琴師の役割は、太守や竜騎士から庶民までに娯楽を提供するエンターテナーというだけでなく、歌の形で歴史を記録する歴史家であり、各地に最新ニュースを広める報道人にして通信業者であり、さまざまな政治的アピールを広める政府報道官でありコピーライターにして広告代理店であり、各地で情報収集をするスパイであり……というなんでも屋。その本拠に乗り込むことになった海育ちの少女の冒険というだけでワクワクしますが、つまるところ「情報を握っている者がいちばん強い」ということなんですよね。
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