付け焼き刃の覚え書き

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「魔術師の帝国」 レイモンド・E・フィースト

2012-08-31 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー


「何が欲しいかを知ることは賢明なことだが、いつそれが手に入ったかを知るのは、もっと賢いことだな」
 グレイ・タワーズの小人族の長ドルガン・タガーソンの言葉。

 魔法使いの弟子となったものの魔法が使えないパグと武術長官の見習い兵士になったトマスは、仲の良い幼馴染み。ある日、2人は浜辺で奇妙な難破船を見つけるのだが、それは空間の裂け目の向こう、異次元世界のケレワンから侵攻してくるツラニ帝國の先遣部隊だった。
 やがてクライディーはツラニとの戦いの最前線となり、戦火の中でパグとトマスは別れ別れとなるのだが……。

 フィーストの『リフトウォー・サーガ』の1作目で、次元の彼方から侵攻してくる軍団との長く苦しい戦いと、それに巻き込まれた2人の少年の数奇な運命と成長を描いた、RPG的なエピック・ファンタジーの初期代表作。
 少年同士の友情と成長の物語で、ボーイ・ミーツ・ガールあり、覚醒する過去の記憶あり、ドラゴンの財宝や森の戦いあり、疑似日本的な異世界の奇妙な政治と軍事のかけひきあり、立身出世と引き裂かれる人格に苦しむ一幕あり、なかなか波瀾万丈のシリーズです。死ぬときには寿命の長さではなく、いかに立派に生きたかが重視されるという竜の言葉は今も座右の銘。

 イラストを代えて、『魔術師の帝国』上下巻として刊行されていたものが『魔術師の帝国』『異世界の虜囚』『偉大なる者』と改題されて3分冊で再版されたけれど、まだ小人族だ妖精族だ地の精だ生霊だという旧訳のままで、あきらかに児童文学を指向したイラストなので、面白さの割には大ブームとまではいかず残念。もうちょい盛り上がれば、サイドストーリー群や続編の『サーペント・ウォー』の翻訳までたどり着いたであろうに、今のところ『伝説は永遠に』にその1編である『薪運びの少年』が載っているくらい……。
 イラストが児童文学の方に走りすぎたんだと思いますよ。

【魔術師の帝国】【リフトウォー・サーガ】【レイモンド・E・フィースト】【ハヤカワ文庫FT】【徒弟選び】
コメント
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