付け焼き刃の覚え書き

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「竜の歌い手~パーンの竜騎士5」 アン・マキャフリイ

2012-08-26 | その他SF(スコシフシギとかも)
 騎士の操る竜が大空に舞うパーンの物語の本編は、政治的駆け引きあり謀略あり、惑星の秘密の探索ありで、けっこう長くて重くてハードなのですが、本当にジュブナイル系というか「竪琴師ノ工舎」三部作についてはかなり薄くて読みやすく、内容的には70年代少女マンガ的といわれるのも納得の内容です。
 そしてメノリ篇の完結編ともいうべき本書は、お金持ちのお嬢さまたちから虐められ、女性蔑視の教師からはにらまれつつ、竪琴師ノ長ロビントンや仲間のピイマアらに助けられながら、メノリが竪琴師としての才能を開花させていく……という王道の展開で、一気に読ませてくれます。
 抑圧されてきた期間が長かったもので、何かというと「自分ごときが」と本心から卑下して尻込みしているのに結果としてベテラン並の仕事を成し遂げてしまうあたりは、普通に語られると単なるイヤミになりがちですが、ここはロビントン師らの人徳と叱咤で痛快な立身出世譚となります。

 もちろん本編の3冊目くらいまでを目を通しておくと、あれこれ断片的に語られている竜騎士や太守たちとの駆け引きや白い竜の顛末などがより一層愉しめるのですが、本編は三部作の倍の厚さがありますし、2巻までの主人公兼ヒロインが1960年代後半というフェミニズム運動が盛んな世相を色濃く反映した、傲岸不遜にして自己主張の激しいレサなので、マスト読めとも言いづらく。こちらを3冊読んで、他が気になったら……くらいで良いんじゃないでしょうか。
 『竜の戦士』『竜の探索』が三部作の前日譚、『白い竜』が三部作と平行して進む物語と後日譚というくらいの時系列。個人的には三部作と『白い竜』だけ読んでいれば良いんじゃないかと思います。

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コメント (2)
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