付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「連邦保安官」 テイバー・エヴァンズ

2012-08-07 | その他フィクション
「人間はな、利口になれないのなら、せめて正直でなくちゃいけないんだ。愚かで悪ではどうしようもない」
 カスティス・ロングの言葉。

 ある年、創元推理文庫が突然ウェスタン小説に手を出しました。ちまちまといろんなジャンルに手を出しては、それが売れるかどうかアンテナを張っているわけですが、これ以後ウェスタンらしい作品は出ていないので、あまり芳しい成績ではなかったのでしょうね。日本では時代小説はいつでもそれなりに需要はありますが、西部小説はダメだったみたいです。そういう意味で貴重ですね。
 1987年といわれてもあまりピンと来なかったけれど、おニャン子クラブが解散した年で、『王立宇宙軍』や『私をスキーに連れてって』が公開された年、NHKの大河ドラマが『独眼竜政宗』だった年だよといわれると「あ~っ!」と思い出すのが私らの年代。
 この頃、小説版『銀河英雄伝説』の刊行が佳境に入っていて、映像化するならテーマ曲は『独眼竜政宗』がいいねえといっていたら、ボレロを使うと聞いて拍手喝采した年。
 うん。記憶鮮明ウラコン篇。

 ロングアームは凄腕の副保安官。ある町のブタ箱に拘禁されている賞金クビのコットン・ヤンガーを裁判所に出頭させるべく向かうけれど、土地の自警団やミズーリ州のシェリフ、鉄道会社の探偵などが睨み合いを続けていてそれどころではなく……。

 正統派の西部劇というと、主人公は勇気もあり武勇に優れた大西部の騎士ともいうべき存在だったけれど、70年代・80年代になるとそんなことじゃあ生き残れないと、正々堂々の勝負なんてものが廃れ、敵も卑怯なら主人公も卑怯、禁欲的な主人公なんかクソ食らえ!……という時代になってしまいます。マカロニ・ウェスタンからアダルト・ウェスタンへの変遷は、この本に収録された鏡明の小論に詳しいです。

【連邦保安官】【テイバー・エヴァンズ】【創元推理文庫】【ニュー・ウェスタン】【フレンチ・スタイル】【居留地】【ジェシー・ジェームズ】【アダルト・ウェスタン】
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