
セーラー服から自衛官、果ては宝塚や十二単まで、さまざまなジャンルの衣装を40代の女性作家が着てみるという『オール讀物』の連載記事をまとめ、増補版としてAKB編を追加したもの。
今時は「コスプレ」のひとことでわかった気になってしまうけれど、三島由紀夫の言うところの「扮装狂」のように、自分とは遠い世界の人の服装を身につけることによって異体験をするというのは最近の若者に限った趣味ではないのです。そして、何を着るかで人の性格やら心構えは変わる面がありますので、実際に体験することで見えてくるものがあるんじゃないかというのがこの企画です。
たとえば、キリッとした印象を与えながらその実、Vゾーンや裾に無防備さが存在しているセーラー服。これに対して、シャープな印象があるけれど実は機能性が高く、しゃがんだり腕を上げてもチラ見えしないスチュワーデスのユニフォームなど、デザイン思想の違いが指摘されます(セーラー服のソレがデザイナーの意図した物かどうかは別として)。あるいは十二単を身につけてしまえば、否が応でも絵巻物に描かれた平安女性のようなポーズしかとれなくなってしまうし、口元だって隠したくなってしまう……そういうものなのです。そういうものなのか……。
『東京女子高制服図鑑』の森伸之のイラストがよくマッチした、着てみて初めて理解できたアレコレが詰まった1冊で、『カエアンの聖衣』と対で読むとますます面白くなる本です。
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