街道を歩く

今まで歩いた街道、町並み、これから歩く街道、町並みを散文的に紹介

宇土の人

2007-04-11 09:32:29 | 街道関連
 本来は四年前に初めて宇土に行き、宇土のその方に世話になったので礼状を出した。その返事が来たのが今から丁度四年前の4月11日、達筆で丁寧なことで著されてあった。
 翌年は年賀状を出した。実は礼状を出すにも住所、氏名が解らず困ったのではあるが、礼状を出さずにおられなかったので、はがきの表に地図を書き、住所は地図を見て適当に書いて送ったのである。それでも郵便物はちゃんとその宇土の人に届いたのである。有難かった。
 ところがである。賀状は出したものの返事が返ってこないのである。ご高齢であったから少し心配したのだが、気にはなっていたのだがそれ以降はそのままにしていた。
 又、一年後別に行く機会が出来たのでご自宅に寄ってみたのだが、何の返事も無くあきらめて引き返した。その後も行く機会も無く、更に二年後の今回その機会を得、宇土に行き立ち寄ることにした。
 駅に着くやいなや足は既にその方向にずんずんと進んでいる。近づくにつれ、自分が焦っていることに気がつく。安否を気遣うような心持で更に足がどんどんと速くなることがわかる。前屈みになり、足が身体より先に出ているのである。
 家の前に着いた。見るとその家はすっかりと変わっている。以前の佇まいは少し残っているものの少し洒落た建物が増築されている。それを見た瞬間、確信したのである。その宇土の人は既にこの世にはいないのだと。
 家に立ち寄ってみる勇気も無く、当時宇土の人が橋の上まで見送ってくれた姿を思い出し、うっすらと目を曇らせながら、ただ船場橋の写真を撮り続けたのである。
 だから私はその時の光景を一生忘れることはしないだろうし、この風景も一生忘れることは無いだろう。そして、宇土の人が言われた、「川べりの榎の大木も新芽を吹き、なかなかの風情でございます。この夏、又、この木の下に涼風を求める道行く人々のよき休息の場となることでしょう。御気が向きましたら又どうぞお越し下さいませ。お待ちしております」
 ここをそぞろ歩き、涼をとってみたい気持ちになったのである。
コメント
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