旅の話が続いていたが、久し振りに本の話。
この本は、結構売れているから、読んだ方も多いだろう。日本、中国、インドの三国の関係が、今後の世界の、重要なキーファクターになるだろうという趣旨だ。
著者は、元、英エコノミスト編集長で、本書も欧米人の読者を想定して書かれたものだから、俺はアジアをこんなに知ってるんだぞ!という部分がちょっと鼻につく感じもする。
キャノンの商号が、観音に由来するとか、観音菩薩は、「観る」を意味する「アヴァローキテー」と、「音声」を意味する「スヴァラ」が結びついた「アヴァローキタスヴァラ」が元の名で、これを鳩摩羅汁が「観世音菩薩」と漢訳したとか、ダライ・ラマが、観世音菩薩の生まれ変わりであると信じられているとかいう部分だ。でも、それだけ、アジアのことを一生懸命勉強して、欧米に広めてくれているのだから、嬉しいではないか。
元エコノミスト編集長による本にもかかわらず、政治関連の分析が多いのは、興味深かった。日本について言えば、やはり戦後処理の曖昧さが、影を落としている。ただ、中国に対してのアジア共通の永年の不信感に比べると傷は浅い。インドは、そういった意味では、他国に迷惑をかけたという歴史は少なく、世界最大の民主国家である。確かにいろんな見方ができる三国だ。
日本は、古来より、インド、中国の文化を輸入し、独自の文化を育ててきた。明治に入り、富国強兵政策で、いち早く西欧列強に並ぶ力を有した時期もある。このユニークな、立場を生かすべきというのも本書の論点のひとつである。
たった今、福田首相が辞めるというニュースが飛びこんできた。自主性は発揮できなかったが、辛抱強く方向性を打ち出そうとしていたと思っていたのだが。日本の首相の椅子もますます軽くなってきた。へぇっ。辞めちゃうんだという感覚で、それ以上のコメントが出ないのは、やはり、ただいた首相だったと言われてもしょうがない。せっかく首相になったのに、何故自分の信ずる道を突き進もうとしなかったのだろう。本当の政治家ではなく、ただの二世だったということか。アジア三国志というには、やはり政治が弱すぎる?