漫画家の里中さんと、同世代の学者である倉本さんの対談。
本屋で見つけた。
かなりディープで、ただ平易な対談形式で、初心者から、研究者まで楽しめる内容になっている。
里中さんは、持統天皇を主人公にした漫画をライフワークにしており、古代に生きた人々の心情を深く研究されている。学者は史実を追うことに重きをおくが、漫画家は、ストーリーに深みを持たせるため、歴史上の人物の心情に重きをおく。その結果、議論が噛み合っているような噛み合っていないような不思議な対談になっているが、この違った切り口の議論が交錯するところに本書の面白みがある。
最新の情報等も踏まえた対談になっており、その面でも面白い。
最後に、二人、共通するのは、日本の特殊性。
明治維新以前、本格的な外国との戦争は少なく、領土を奪ったり奪われたりの歴史もなく、当然、切った張ったの外交の経験もない。
中国と韓国との交流があったが、海を隔てているという特殊性から、情報が100%共有される訳もなく、交渉が継続的に行われることも、本格的な戦争が広がることもなかった。
それが、明治維新以降、盲目的に受け入れた西欧的な発想に基づく富国強兵政策により、突っ走ってしまった一因になっている。
敗戦後も、アメリカに追随するのみとなっており、まだ切った張ったの外交を日本自身ができるようになったようにも思えない。
最後は、古代史の研究を踏まえて、これからの日本を考えようという論調になった。
古代史を研究することにより、日本の成り立ち、特殊性を理解した上で、未来志向の考え方につなげる。
今の日本を理解しようとする時に、意外と見落としがちな観点と思う。