本書は、本屋で見つけたが、著者の経歴が極めてユニーク。
美術評論家でありながら、解剖学者。
著者によれば、絵が描くものは、解剖学もという文化が、かつてから、あったらしい。
ただ、今は、そういった考え方をする人も少ないはずで、ダ・ヴィンチが何を考えていたかを推し量るには、ベストな著者と言える。
ダ・ヴィンチについては、モナ・リザから始まり、多くの作品に接してきたし、特別展にも多く行ってきた。
著者は、その中で、ダ・ヴィンチがなくなって、500年の催しが多く開催されたのをきっかけに本書を著した。
昨年は、世界中大騒ぎだったらしい。
たまたま、私が、ここ数年に訪れた様々な場所も取り上げられているので、楽しく、リアルに読むことができた。
単なる美術鑑賞旅行ではなく、著者の見解が、随所にちりばめられているのが楽しい。
それも、かなり個性的な見解が。
ウフィッツイーの受胎告知は、日本でも、現地でも見たが、ダ・ヴィンチ初期の作品であるにも関わらず、謎がたくさん。
その後の作品についても、言うまでもない。
その技法は、画家というよりも、科学者の目であると著者は説く。
膨大な数が残された手記にも著者は、丹念に目を通している。
まだ地動説もなかった時代に、ダ・ヴィンチは、どういう目で、世の自然現象を見ていたのか。
画家というのは、ダ・ヴィンチのほんの一面にしかすぎず、その偉大さは、もっと大きなところにあるというのが本書の趣獅ゥもしれない。
質量とも、とんでもない功績を残した偉人であることがよくわかる一書。
美術史ファンにお勧め。