本書は、風土記の世界を読み、その存在を知り、ゲットした名著。
1967年初版で、なんと37刷。
50年近く、読み継がれてきたことになる。
内容を読むと、まず驚くのは、著者の確信度の高さだ。
古事記については、いろいろな読み方があるのだが、著者が読み切った内容を、確信をもって披瀝している。
当時、まだ出雲地域での発掘は進んでいなかったが、東の大和に対する西の出雲、生の大和に対する死の出雲という考え方で、組み立てられた物語と解釈し、その実在性には、あまり触れていない。
古事記の中の逸話については、いろんなアジアやヨーロッパの伝説とのつながりが指摘されるが、あまりそれにとらわれるのは、議論を誤った方に導くとして、古事記内の意味不明な点の解明に重点を置く。
そして、古事記の最初の本格的に解析を行った本居宣長の説にかなり共感を示しつつ、誤りと思われることは断罪する。特に、明治維新後の、政治に絡んだ諸説の変節には手厳しい。
この記し方が、力強く読者の心に響く。
古事記に興味のある方なら、まずは、目を通しておくべき書と感じた。