読売新聞で、小児の予防接種の特集が組まれていますので、こちらでも見ておきます。
日本のすべての子どもたちに、世界標準の予防接種が行えるように、期待をいたしております。
もちろん、当院かかりつけの子ども達には、世界標準を基準にして、接種漏れがないかをそのつどチェックをさせていただいております。
*****読売新聞(2011/12/2 2011/12/5)*****
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=51049
子どもの予防接種(1)ヒブ・肺炎球菌「安全」と結論
11月10日、感染症の後遺症に苦しむ患者やその家族、小児科医らが予防接種の拡充を訴え、シュプレヒコールを上げながら都内をデモ行進した。
ワクチンとは、感染症の原因となる病原体の毒性を弱めるなどして作った薬液のこと。注射などで接種して、病気に対する抵抗力をつけるのが予防接種だ。デモ行進では、「ヒブ(インフルエンザ菌b型)」と「小児用肺炎球菌」のワクチンを、公費で行う定期接種にすることなどを訴えた。
二つのワクチンは、脳を覆う髄膜に細菌が感染して発症する細菌性髄膜炎を防ぐ働きがある。国内では2008年にヒブ、10年に小児用肺炎球菌のワクチンが相次ぎ発売された。いずれも自費で受ける任意接種になっている。
細菌性髄膜炎はのどや鼻に感染したヒブや肺炎球菌が原因で起こる。年間約600人を超える子どもが発症し、約5%が死亡、20~30%に発達障害や脳の障害などの後遺症が残る。
横浜市の会社員、中島香里さん(38)の長男、嘉克くん(6)は生後8か月だった06年5月に細菌性髄膜炎を患った。39~40度の高熱が約1週間続き、けいれんも起きた。約1か月の入院を余儀なくされ、抗生物質の点滴などを続けた。
今でも年1回通院し、後遺症が出ていないかどうか様子を見ている。中島さんは「脳の発達に遅れが出ないかどうか心配です。ワクチンを接種できれば、感染することはなかったのに」と悔やむ。
国立病院機構福岡病院(福岡市)統括診療部長で小児科医の岡田賢司さんは「細菌性髄膜炎は生後6か月ごろから増える。その前に必ず予防接種を受けてほしい」と強調する。
だが、厚生労働省は今年3月、ヒブと小児用肺炎球菌の予防接種を一時見合わせた。両ワクチンを同時接種した後、死亡したという報告が相次いだためだ。
報告を受けた厚労省は検討会で議論を重ねた。結局、「接種と死亡に明確な因果関係は認められず、ワクチン接種の安全性に特段の問題があるとは考えにくい」との結論を出した。
4月に両ワクチンの予防接種は再開されたが、同時接種を控える保護者は少なくない。岡田さんは「同時接種が原因で死亡したという報告は海外でもない。ヒブ、肺炎球菌以外でも乳幼児期に接種が必要なワクチンは多くあり、漏れなく接種するため、同時接種を積極的に行う必要がある」と指摘する。
様々な病気から子どもたちの命を守る予防接種。その最新事情を報告する。
(2011年12月2日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=51140
子どもの予防接種(2)ポリオ「不活化」望む声多く
東京都台東区の坪内歩ちゃん(1)は11月下旬、母親の藍(あい)さん(33)に連れられ、電車で30分かけて渋谷区のたからぎ医院を訪ねた。手足のまひを引き起こすポリオ(急性灰白髄炎)の不活化ワクチン接種のためだ。
ポリオの予防接種には、病原性を弱めたポリオウイルスをシロップに混ぜて飲む生ワクチンと、死んだウイルスを含む溶液を注射する不活化ワクチンの2種類がある。生ワクチンは弱いながらもウイルスが生きているので、まれに接種後にポリオを発症し、まひが残ることがある。
これに対し不活化ワクチンはその心配がない。世界では不活化ワクチンが標準だが、日本は生ワクチンを定期接種(公費負担)に使っている。
不活化ワクチンを接種する場合、公費負担にはならない。海外から取り寄せている医療機関を探すしかなく、計4回の接種で約2万円の自己負担が必要になる。しかも健康被害が起きても、国の補償はない。
坪内さんは悩んだが「万が一、まひが起こると怖い」と考え、不活化ワクチンの接種を決めた。自宅近くで接種できる医療機関がなく、対応しているたからぎ医院に足を運んだ。
院長の宝樹(たからぎ)真理(しんり)さんは「遠い仙台や名古屋から来た人もいる」と言う。坪内さんは「早く、全国どこでも不活化ワクチンを安心して接種できるようになってほしい」と話す。
国産の不活化ワクチンは製薬企業が開発中で、年内にも承認申請する。厚生労働省は審査を急ぐが、導入は早くても来年度末の見込みだ。「安全性や有効性の確認をおろそかにできない」(同省)と言う。
患者団体などは承認までの間、海外の不活化ワクチンの緊急輸入を要望している。だが、同省は「緊急輸入は病気が流行して防ぐ手段がない時の特例措置。ポリオは流行しておらず、生ワクチンの予防効果も高い」と応じない考えだ。
ただ、まひへの恐れから今春の全国の生ワクチン接種率は昨春より18%も落ちた。自費で不活化ワクチンを接種した人と、導入を待つ人の両方がいるとみられる。同省は「免疫のない子どもが増えるのは危険だ。不活化ワクチン導入までは生ワクチンの接種をしてほしい」と呼び掛ける。
日本小児科学会は「何も接種しない選択が最も良くない」とし、生か不活化のいずれかのワクチン接種を勧める声明を出した。
不活化導入を急ぐよう国に働きかける動きもある。神奈川県は今月から不活化ワクチンを独自に輸入し、希望者に有料で接種する事業を開始した。
宝樹さんは「不活化ワクチン導入を待ち望む多くの人の声に国はすぐにでも応えてほしい」と訴える。
(2011年12月5日 読売新聞)