元日の新聞記事で、その一年を読むことを楽しみにしています。
以下、六紙(朝日、東京、毎日、日経、読売、産経)の記事を、見てみます。
独断と偏見で元日一番の記事は、毎日新聞特集「わかりあえたら 不寛容時代にー住宅街の障害者ホーム建設 「暮らし壊される」過熱した反対運動 住民漠たる不安」
相手への思いやりや寛容さがなくなり、極端なヘイトスピーチを公然と述べるひとがいる現代社会において、極端な言論・行動をとるひとへの取材も入れて、公平性を確保しながら、記事をすすめ、不寛容な社会からどう新たな時代に現代人が進めばよいか、示唆を与える特集である。
*参照
2014年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/e4efb0259885d7e84f3936572a8b6230
2013年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/10934d91646d6b114ffbe5023ae05408
2012年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/9fb98ef88d59ab808969f6c396621bfa
2011年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/4c09f70b97decbb7da7e7148ec152052
2010年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/a970d3845515c8c0633468a3269da4ab
2009年1月1日http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/18c3c4feb2a3e29088dbce3d7b71c997
→は、小坂の感じたこと
<朝日新聞>
1)1面
独自の特集、「個の力紡ぎ 世界に」
世界と日本の関係を新たに築こうとした個人の一人一人のドラマ
2)天声人語
365日、8760時間の一年がまっさらな顔で始まった。
3)社説 グローバル時代の歴史 「自虐」や「自尊」を超えて
どんな歴史が必要か。
米ハーバード大学名誉教授の歴史家、入江昭さんは昨年出版した「歴史家が見る現代世界」の中で「グローバル・ヒストリー」の重要性を訴えている。
自国の歴史を相対化し、グローバル・ヒストリーとして過去を振り返る。難しい挑戦だ。だが、節目の年にどうやって実りをもたらすか、考えて行く支えにしたい。
4)その他記事
*東京観光 TOP16
築地市場は4位でした。
*鏡の中の日本戦後70年 世界からのメッセージ
*私たちの生きる今いま 子ども達の世界
世界の若者(10歳から24歳)計18億人
相対的貧困率 18歳未満 13.9% 18から25歳 14%
世界の紛争下に暮らす子ども 2億3000万人
小中学校に通えない子ども 小学校5780万人 中学校6290万人
*ヘイトスピーチ 各国の対応は
欧州、法律で規制
米、社会が許さぬ土壌
<東京新聞>
1)1面
武器購入国に資金援助 途上国向け制度検討
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015010190071433.html
→日本がおかしな方向に向かっていることを的確に伝えて下さっている。
2)コラム「筆洗」
二〇一五年で戦後七十年となる。日本は成長期、安定期を過ぎて「対立期」の迷路にいる、とは縁起にさわるか。格差、世代差、性差。支持する政策の違いなどもあろう。日本人が差や立場の違いという深い川をはさんで石を投げ、嘲笑し合っていないか心配する▼硬直化してはならない。川中へと一歩出て、話をすれば分かりあえるところもあろう。知恵も出る。共感力という日本人の「情」で対立を和らげたい
3)社説 年のはじめに考える 戦後70年のルネサンス
大東亜戦争では三百十万人の日本人が犠牲になりました。軍人の死者は二百三十万人、うち六割の百四十万人は国家に見捨てられての餓死だったことも忘れられてはならないはずです。
八十一歳の誕生日に際して天皇陛下は「日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとより、できるだけ多くの世界の国とともに支え合って歩んでいけるよう願っています」と述べられました。歴史認識などでの中韓との対立ときしみの中で、昭和を引き継ぎ国民のために祈る天皇の心からのお言葉でしょう。
戦争での新聞の痛恨事は戦争を止めるどころか翼賛報道で戦争を煽(あお)り立てたことです。その反省に立っての新聞の戦後七十年でした。
政治も経済も社会も人間のためのもの。私たちの新聞もまた国民の側に立ち、権力を監視する義務と「言わねばならぬこと」を主張する責務をもちます。その日々の営みが歴史の評価にも堪えるものでありたいと願っています。
→東京新聞の心意気を感じます。この一年も期待しています。権力におもねらないで下さい。
4)その他の記事
<毎日新聞>
1)1面 一極社会 東京と地方
再生 国に頼らず
長野県 下条(しもじょう)村 人口4000人
村民が道を舗装 1500カ所
2)コラム「余録」
戦後70年となる2015年を迎えた。
70年という再現を考えるには、先の1938年が明治元年から70年にあたることを重ねあわせてみるのもいい。
(1938年は、前年に日中戦争が起きて迎えた新年)
その時、先人が19世紀の世界に必死に適応して造り上げた近代国家は20世紀の新たな現実で破局への迷路にはまった。
→70年というものを実感させてくれるコラムだった。現代人は、気をつけねばならない。
3)社説 戦後70年 日本とアジア 脱・序列思考のすすめ
アジアの中でぬきんでた先進国だった日本は今、近現代史の中で初めて「強いアジア」と向き合う体験を迫られている。「アジアで1番」という序列意識の揺らぎこそ、不安といらだちの正体であろう。
だが、日本を追いかけるように成長してきた中国と韓国の興隆はいわば、歴史の必然でもある。あと戻りできない東アジアの力関係の変化を受け止め、自らの立ち位置を見つめ直すことが、戦後70年を迎える日本の課題ではないだろうか。
国の力とは多元的なものであり、力と強さだけが尺度ではない。どの国の歴史にも文化にもそれぞれに誇るべきものがある。序列思考の呪縛から解き放たれ、互いのナショナリズムを尊重しあう東アジアを展望していく。その新たな地平を切り開くことが、本当の意味での戦後レジームからの脱却だと考える。
→昨年同様に読ませてくれる社説であった。
4)その他記事
*わかりあえたら 不寛容時代に
住宅街の障害者ホーム建設 「暮らし壊される」過熱した反対運動 住民漠たる不安
→小児科医師らのMLでも話題になった障害者ホーム建設の話でした。住民の漠たる不安を解消して行くことこそ、医師の役割と考えます。
*ガラスの天井 女性と政治(連載担当 田村佳子 吉永磨美 細川貴代 中川聡子)
*2015年 統一地方選
<日本経済新聞>
1)1面 特集記事 働きかた NEXT 変えるのはあなた
「制約社員」が残業の岩盤崩す
2)コラム 「春秋」
過ぎ去った日々はしばしば美しい。たしかにあの戦争の時代に、人々は生と死にひた向きに対峙した。しかしまた、無理無策を重ねてたくさんの過ちを犯し、アジアを苛(さいな)んだ現実もあった。「運命の年」から70年。
3)社説 戦後70年の統治のかたちづくりを
明治時代、日本人としてはじめて米エール大の教授をつとめた歴史学者の朝河貫一が、日露戦争に勝利した後の祖国を憂えて著した『日本の禍機(かき)』に次のような一節がある。
「読者よ、日本国民はその必要の武器たるべき、健全なる国民的反省力を未だ研磨せざるなり」
それから1世紀。われわれは反省力を研磨しただろうか。
4)その他記事:ここに注目2015
*観光 北陸新幹線3月開業 にぎわいは粘り強さから
*国際 EUの今後占う一票
*環境 温暖化ガス削減 合意なるか
*産業 電力自由化、企業の動き活発
*経済 TPP交渉、鍵握る米国
*金融 もっと投資へ 2年目の期待 NISA、使いやすく変身
*生活 預け先に多様な選択肢 地域型保育 本格スタート
5)その他の記事:戦後70年 私たちの軌跡
バブル残り香は問う
5)その他記事:TARGET 2020
*きそう 次世代カーを「ふつう」にする
*のびる 勘所 アジアをつかめ ASEANをパートナーに
*かせぐ 企業も家計もまったなし
*むかえる 訪日客2000万人へ 地方競演 素通り、とんでもない
*ささえる 迫る国際目標期限 財政を立て直す
*まもる 巧みに塞ぐ 海の空白
<読売新聞>
1)1面 ビットコイン不正操作
→毎年、IT関連の特ダネ記事が読売元旦記事1面に多いような気がする
2)コラム「編集手帳」
春の枝に花あり
夏の枝に葉あり
秋の枝に果あり
冬の枝に慰めあり
内村鑑三
→ちなみに昨年元旦
若山牧水の歌
「男なれば歳二十五のわかければあるほどのうれひみな来よとおもふ」
3)社説 日本の活路を切り開く年に 成長力強化で人口減に挑もう
→社説の字数は、6紙の中で、一番多かった。
ただ、単なる「政権の宣伝公報紙」になりさがっていないか、ご一考願いたい。
4)その他記事
*新春対談 ノートルダム清心学園理事長 渡辺和子さん(87)×橋本五郎本社特別編集委員
*2015年展望
*人生をデザイン 「2枚の名刺」本業以外の道
→ハンナ・アレントのwork labor activityの三つの発想があってもよいと思う。
「3枚目の名刺」=地域、も持ちたい。
<産経新聞>
1)1面 天皇の島から 戦後70年
時を越え眠り続ける「誇り」
2)コラム 「産経抄」
現代の中国も2つの文化を受け継いでいる。すなわち「政府の愛国教育は『羊』」「日本との経済関係は維持したいというホンネは『貝』」である(『貝と羊の中国人』新潮新書)。
▼抗日戦争70年の今年、中国政府は日本に対して「歴史戦」を猛烈に仕掛けてくるだろう。その一方で、中国人観光客は相変わらず日本で土産物を買いあさっていくのかもしれない。いかに「貝と羊」に向き合うか、今年も最大の課題である。
→敢えて、中国との敵対の姿勢をとらないでもと、思わないでもない。
3)年のはじめに 樫山幸夫論説委員長 覚悟と決意の成熟社会に
他社依存をさかのぼれば畢竟(ひっきょう)、日本国憲法に行き着く。その前文は「われらの安全と生存」を「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持する決意を披瀝(ひれき)している。平和を乱し、不公正で信義なき振る舞いをするくになど存在しないというのか。わが国の周りを見回しただけでも的外れであることがわかる。国の守りすら他社依存では自助の精神を育むことなど不可能だろう。
「自立と自助の国」をめざすには、憲法の改正こそが必要だ。
→論理の飛躍が、はなはだしいにも程がある。
昨年の産經新聞の元旦社説に驚いたのを思い出す。
今年も、同様に驚き、また、残念だった。
憲法の大切な理念のひとつは、国際協調主義である。
論理の飛躍を生み出したいがばかりに、産經新聞が自身に都合のよい部分のみきりとった前文箇所を、全体で見てみたい。
*****憲法 前文の抜粋、( )は小坂が補う******
「日本国民は、恒久の平和を念願(平和主義)し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない(国際協調主義)のであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ(目的達成の誓約)。」
前文は、日本国民に対し、国が国際協調主義をとることを誓約した文章であることがわかる。
「不公正で信義なき振る舞いをする国」が存在しようがしまいが、日本国は、国際協調主義をとることを誓約したのである。
ちなみに、昨年、産經新聞の社説の驚きは、以下、再掲。
*******昨年の産経新聞 年のはじめに の??再掲*********
昨年、「特定秘密保護法」が成立した。あの騒ぎは何だったのだろう。どこの国にも存在し、各国との情報交換に不可欠な法律にもかかわらず、戦前の悪名高い「治安維持法」まで引き合いに出して不安をあおる一部メディアの論陣は、「過剰反応」を通り越して、噴飯ものだった。ナンセンスな議論は国の安全を脅かすから罪は重い。
→???「特定秘密保護法」の問題点をご認識ではない。
「過剰反応」でとどめずに、「噴飯ものだった。」とまで言い切りますか?
「特定秘密保護法」で狙われる第一の標的は、自分達の同士、新聞記者なのに、その危機感が欠如しているのでしょうか。
****************
4)その他記事
*家族 「虐待の連鎖」乗り越えて
*正論 日本人よ、逆境に耐える力養え 曽野綾子
*新春対談
パラリンピック選手 佐藤真海さん ×安倍晋三首相
*年男・年女議員54人
以上
「新春対談に、首相の登場は、産經新聞のみ。
あの読売でも、菅官房長官止まり。
政府広報誌は、読売から産経にシフト?
読者層から、菅読売、安倍産経の役割分担?」
と去年書いたが、
今年も、相変わらず、読売が政府広報誌、産経が安倍宣伝紙の様相を呈するところが気になる。