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賃貸借契約 民法概観:特別法の借地借家法による修正を加える前の状態の理解 民法601-621条

2012-06-11 16:09:12 | シチズンシップ教育

 民法における賃貸借の条文は、私たちの生活に密接に関連しています。

 多くの私たちは、建物や土地を賃借して生活をしていますし、事業を行っています。
 きちんと理解をしていく必要があります。

 賃貸借に関わる条文を理解したいと思います。

 まず、はじめに、大切なことは、これら民法の条文は、賃借権の効力が弱いため、特別法である借地借家法により修正が加えられている点です。 

 そのことを頭においておきながら、まずは、民法条文自体を見ます。


 私の解説は、青字で書き込みます。
 都合により、並べ替えています。


*******民法*******************************


 第七節 賃貸借

     第一款 総則


1.賃貸借の成立に関する条文(601)
 諾成契約。不動産賃貸借も原則として契約書等の形式的要件は不要
 (定期借地・定期建物賃貸借は書面が要件)



(賃貸借)
第六百一条  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


2.賃貸借の効力に関して、 a 存続期間(602-604)

(短期賃貸借)
第六百二条  処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
一  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二  前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三  建物の賃貸借 三年
四  動産の賃貸借 六箇月

(短期賃貸借の更新)
第六百三条  前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。

(賃貸借の存続期間)
第六百四条  賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
→賃貸借の期間は20年を超えることができず、更新も20年が上限となるのが一般原則(604)。
 ただし、借地借家法によりこの制限は排除。借地借家法(29条2項)。

 


     第二款 賃貸借の効力


2.賃貸借の効力に関して、 b賃貸人・賃借人の関係(権利義務)(606-611、614-616)


(賃貸物の修繕等)
第六百六条  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
→賃貸人には、修繕義務があります。(606条1項)

(賃借人の意思に反する保存行為)
第六百七条  賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条  賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2  賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
→賃借人の支出した必要費に対しては、賃貸人は直ちに償還する義務があります。(608条1項)


(減収による賃料の減額請求)
第六百九条  収益を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。ただし、宅地の賃貸借については、この限りでない。

(減収による解除)
第六百十条  前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。

(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
第六百十一条  賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
2  前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。


(賃料の支払時期)
第六百十四条  賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

(賃借人の通知義務)
第六百十五条  賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

(使用貸借の規定の準用)
第六百十六条  第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。





2.賃貸借の効力に関して、 c 対第三者関係(対抗関係)(605、612-613)

(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条  不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
→不動産賃借権は登記がなければ第三者に対する対抗力がない。それを修正して、借地借家法31条1項は、借家権の対抗要件を「建物の引き渡し」と定めている。


(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
→賃貸人の承諾なしには、賃借権の譲渡も転貸もできず、無断で行うと解除原因となる(612条)。


(転貸の効果)
第六百十三条  賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。


3.終了原因に関して、 a 解約申し入れ(617-618)

     第三款 賃貸借の終了


(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条  当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一  土地の賃貸借 一年
二  建物の賃貸借 三箇月
三  動産及び貸席の賃貸借 一日
2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条  当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。


3.終了原因に関して、 b 黙示の更新(619)

(賃貸借の更新の推定等)
第六百十九条  賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
2  従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。

3.終了原因に関して、 c 解除の効力(620)

(賃貸借の解除の効力)
第六百二十条  賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。


4.準用規定(621)

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百二十一条  第六百条の規定は、賃貸借について準用する。

第六百二十二条  削除

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