久しぶりに家の近くの良書ばかり置いてある古本屋さんに立ち寄りました。いつもの親父さんがいましたが、客が本を選んでいるときに声をかけたりする野暮はありません。
こちらの目的は、単行本の古本が取り寄せできるのかどうか。すばらしい本にめぐり合ったのですが、全五巻のうち1巻だけが手に入った状態。残りの4冊が手に入るものかどうか・・・。
「あのう、こちらでは古本の取り寄せなんてできるのでしょうか」
「一応伺いはしますけどね」と古い大学ノートを取り出しました。
「それで、なんていう本ですか?」と親父さん。
こちらは(この親父さん、知っているかな?)と思いながら「え~、守貞謾稿(もりさだまんこう)って言うんですが」
「守貞謾稿!それはなかなか出てこないなあ・・・」この親父さん、この本を知ってる!
この守貞謾稿というのは、喜田川守貞という天保時代の人が、江戸と京都、大阪の三都の風物がいろいろと違うことを面白く思い、当時の目に映るものをことごとく説明しようとした江戸時代後期の風俗百科事典のような本なのです。今日、岩波文庫の黄色い背表紙で「近世風俗史」という題名で全五巻が世に出されていますが、江戸時代の百科事典のようなもので、実に良い本です。
「一巻目はどちらで手に入れられましたか?」
「え・・・と、こちらじゃなかったでしたっけ?古本なんですが」
「いや、うちじゃないねえ」と、私の本を手に取ると背表紙をめくって「あ、神田ですね」
なるほど、神田の古書店のタグがついていました。
「守貞謾稿ねえ、これはいい本ですよ」
「僕も一巻だけ見て、いい本だなと思いました」
すると親父さんは、「こういう本はちゃんと読まなくちゃ。そこにありますよ、全五巻で」と本棚の一角を指差すと、ほ、本当だ、全五巻の大判でケースに入った古本がありました。
「えーとね、定価3万円が1万7千5百円。こういう本は単行本ではなくて、子供にも残してあげたいくらいですよ」
「いや、残念ながら僕の場合は取っておく様な本の読み方をしないので、この単行本ももう落書きだらけで・・・。本には申し訳ないけど。しかしここにあるのが分かりましたから、臨時収入でもあれば買いに来ますよ」
「分かりました。一応2巻め以降があるかどうかを探しては見ますよ。でもこういう本は出てこないから期待しないでください」
「はいはい」
やれやれ、本の題名だけでどこにあるかまで知っているとは!少し試して見ようなんて思うこちらが恥ずかしい。久しぶりに訪ねた古本屋さんでしたが、また親父さんの博識に脱帽です。
本への相通じる思いを感じて、ちょっと心が温かくなりました。
こちらの目的は、単行本の古本が取り寄せできるのかどうか。すばらしい本にめぐり合ったのですが、全五巻のうち1巻だけが手に入った状態。残りの4冊が手に入るものかどうか・・・。
「あのう、こちらでは古本の取り寄せなんてできるのでしょうか」
「一応伺いはしますけどね」と古い大学ノートを取り出しました。
「それで、なんていう本ですか?」と親父さん。
こちらは(この親父さん、知っているかな?)と思いながら「え~、守貞謾稿(もりさだまんこう)って言うんですが」
「守貞謾稿!それはなかなか出てこないなあ・・・」この親父さん、この本を知ってる!
この守貞謾稿というのは、喜田川守貞という天保時代の人が、江戸と京都、大阪の三都の風物がいろいろと違うことを面白く思い、当時の目に映るものをことごとく説明しようとした江戸時代後期の風俗百科事典のような本なのです。今日、岩波文庫の黄色い背表紙で「近世風俗史」という題名で全五巻が世に出されていますが、江戸時代の百科事典のようなもので、実に良い本です。
「一巻目はどちらで手に入れられましたか?」
「え・・・と、こちらじゃなかったでしたっけ?古本なんですが」
「いや、うちじゃないねえ」と、私の本を手に取ると背表紙をめくって「あ、神田ですね」
なるほど、神田の古書店のタグがついていました。
「守貞謾稿ねえ、これはいい本ですよ」
「僕も一巻だけ見て、いい本だなと思いました」
すると親父さんは、「こういう本はちゃんと読まなくちゃ。そこにありますよ、全五巻で」と本棚の一角を指差すと、ほ、本当だ、全五巻の大判でケースに入った古本がありました。
「えーとね、定価3万円が1万7千5百円。こういう本は単行本ではなくて、子供にも残してあげたいくらいですよ」
「いや、残念ながら僕の場合は取っておく様な本の読み方をしないので、この単行本ももう落書きだらけで・・・。本には申し訳ないけど。しかしここにあるのが分かりましたから、臨時収入でもあれば買いに来ますよ」
「分かりました。一応2巻め以降があるかどうかを探しては見ますよ。でもこういう本は出てこないから期待しないでください」
「はいはい」
やれやれ、本の題名だけでどこにあるかまで知っているとは!少し試して見ようなんて思うこちらが恥ずかしい。久しぶりに訪ねた古本屋さんでしたが、また親父さんの博識に脱帽です。
本への相通じる思いを感じて、ちょっと心が温かくなりました。