稚内の知人から、「毛ガニパーティをやるので来ませんか」というお誘いがありました。
毛ガニがふんだんに食べられるというのでまちなかの「ペチカ」というロシア風居酒屋へと向かいました。
今回の毛ガニは宗谷岬で漁師をしている加賀谷さんのところのものですが、「収穫は三月までで、冷凍していたものですがあまり時間がたつと旨さがおちるものですから今が頃合で食べてしまおうということなんです」とのこと。
毛ガニの山から一パイいただいて開いてみるとカニみそもたっぷりで夢中で食いつきました。
一生懸命食べているとカニを提供してくれた宗谷の漁師のKさんが、「カニの美味しい食べ方を知っていますか?」と話しかけてくれました。
「いやあ、ちゃんと習ったことはありません」というと、「じゃあ教えましょう」と漁師風の食べ方を教えてくれました。
Kさん曰く、「まずカニの甲羅を取りますが、取ったところでミソを食べてしまわないでください」
「あ、だめなんですか」
「はい、甲羅を取ったらフンドシとエラと足を取ってしまいます。足は足で食べてしまってください」
「はい」
「甲羅は、口の周りの部位をとってしまってミソの残った甲羅に、胴体の足の付け根の部分の実を取って入れてゆきます。ここを"ダキ(=抱き)"といいますが、ダキは真ん中から割ります。足の付け根の部分は薄い仕切りの部屋になっているので、足を取ったところからつつくと塊になって取りやすいです」
「なるほど」
「ダキの部分の実だけで甲羅が大体いっぱいになりますから、いっぱいになったところで全体を箸でまぜてミソの味を全体に伸ばします」
「ミソだけで食べちゃダメなんですか」
「実全体になじませてミソの風味を味わう方が美味しいと思うのでそちらを勧めているんです」
なるほどダキの部分で甲羅に山盛りの実が取れて、混ぜるとカニミソ風味たっぷりのカニが楽しめました。
「こういう食べ方って初めて聞きましたが、どこかで教えてくれるものなんですかね」
「漁師としてこういう食べ方が美味しいと思ってきましたが、誰かに教えたということはありませんね」
身を全部食べてから甲羅にお酒をいれるとほんのりカニミソ風味のお酒が楽しめます。カニミソが多すぎるとくどいとKさんは言います。
「うーん、稚内でカニを食べるときに必要な知識として教科書に載せたいですね。そもそも『稚内の教科書』なんてないですもんね。これは稚内の教科書がいるなあ」
◆
カニの食べ方だけじゃなくて、ホタテの剥き方や焼き方一つだって、どうやったらいいかという情報って少ないものです。
稚内に観光で来るときに事前に必要な知識をまとめた教科書ってあっても良さそうだと思いました。
『稚内の教科書』ってどうですか。