稚内商工会議所の副会頭で、地元水産業界の重鎮とお話をする機会があり、稚内の水産業の今後を伺いました。
まず私の心配はロシアの下院議会が、同国の排他的経済水域(EEZ)内で日本漁船などが行っているサケ・マスの流し網漁を来年1月から禁止する法案を可決したという問題。
この法案は今後ロシア上院で審議され、可決後にプーチン大統領が署名すれば施行されるとのこと。
「この問題は稚内の水産業界にはどのような影響がありますか?」と訊くとその方は、「直接的には稚内への影響はないと思います。今稚内には今回禁止されたような漁をしている船はもうありません。道東や本州北部の水産関係者の方が影響が多いでしょうね」
「ちょっと安心しました」
「ところがその議論とは別にやはり日本国全体の漁業環境は厳しさを増しています。今日日本の船団がカツオ漁のために赤道近くの太平洋で遠洋漁業をしています。暖かいところのカツオは脂がのっていないために冷凍で国内の運んでくれば鰹節の材料に適しています。日本近海で獲れるカツオは寒さのために脂がのってきてこれは食用に適しています」
「なるほど」
「で、漁をする場所ですが基本的には太平洋上の近隣国の200海里の外の公海です。しかしそこは周辺の島嶼国の200海里に囲まれているエリアです。こうした区域についての資源管理は隣接して囲んでいる国々が管理しようという動きが顕著です。そのため入漁料のような金銭を支払って漁をさせてもらうのですがこの価格がどんどん値上がりをしています」
「公海といっても漁が難しくなっていると」
「はい、特にオホーツク海などは千島からアリューシャン列島、ロシア大陸に樺太と200海里は全部ロシアの領土からの範囲なので、もうオホーツク海はロシア200海里の内海で資源管理はロシアが行うこととなっています。事実上、航行には問題なくても漁などの生産活動はもうできないのです。日本の遠洋漁業はますます厳しくなりますね」
200海里で囲まれたところは公海といえども資源管理上は事実上公海とはいえないなんて初めて知りました。
世界有数の魚資源消費国の日本としては、ますます肩身が狭くなりつつあるのかもしれません。
最近はマグロも養殖ができるようになったという明るい話題もありますが、資源管理という国家間の交渉力を持ちつつ、その一方で育てる漁業のための技術開発やイノベーションが必要なようです。
時代の変化についていかなくてはなりませんね。