物を生産者から消費者へと届けるその流れのことを「物流」と言います。
物流を行うためには時間と空間の制限を超えて物を運ぶことが必要で、道路や船を使って様々な荷物が我々の知らないところで行き来をしています。
それをビジネスの視点で見ると、実は物を運ぶに当たっての道路の距離というのはあまり物流のルートを決めることに対して決定的な要素にはなっていません。
島国であるこの日本にとって最大の要素は船の定期航路があるかどうかということなのです。物を運ぶにあたって、自分たちの都合に合わせていちいち船をチャーターで用意して運ぶなんてことはコストがかかってしかたがありません。
大切なのは荷物を積んでいようが積んでいまいがとにかく港と港の間を行き来している定期船があるかどうかということで、それがありさえすれば、それにトラックやコンテナなどの荷物を載せれば、安価に物が運べるというわけです。
さらにそれをビジネスの視点で言うと、片方からもう一方へ運ぶだけよりは、その船やトラックが帰りに荷物を積んで帰ってきてくれるとより効率的な物流になります。
行きと返りで同じくらいの量の荷物が安定的に運ばれれば物流のコストも低く抑えられるのです。
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稚内にはいわゆるコンビニと呼ばれる業態のお店としては、セイコーマートしかありません。逆に言うとセイコーマートだけが稚内に進出で来て、他社は進出できないでいます。
その理由をある方はまことしやかにこういいました。
「セイコーマートさんは自社で販売する牛乳を豊富牛乳公社から買い付けていることから、豊富から札幌などへ物を運ぶ物流システムが必要になります。そこで札幌まで来たトラックを空で豊富へ返すのではなく、そこのセイコーマートで陳列する商品を載せることで、安く宗谷方面へ物を運ぶ物流の流れができました。そのために宗谷地域にはセイコーマートは進出できるのですが、他社ではこの地域にものを運んでくるだけではペイしないという判断で進出できずにいるのです」
私自身はセイコーマートさんの物流に対するポリシーを直接聞いたことがないのですが、それがセイコーマートさんだけがここで展開できる大きな要素だとは何度も聞かされたものです。
物流を効率的に運用することはビジネスの可能性を広げる重要な要素です。
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今日道内有数の飲料メーカーであるC社の方が訪ねてきて、地域の事情などについて意見を交わしました。
その方が言うには、「この地域では単位人口当たりの売り上げで他の地域とひけは取っていません。まああまりライバルも進出が難しいのかもしれませんが」とのこと。
そこでどういう形で飲料製品を運んでいるのかが気になりました。
「昔ならデポジットの空き瓶を運び返したのかもしれませんが、今日缶やペットボトルの飲料製品はどのように運んでくるのですか?」
「はい、提携している輸送会社に頼んで運んでもらっています。おっしゃるとおり、昔は空の瓶を運びましたが今は空き瓶がないので片道輸送です。しかし輸送会社では帰りのトラックに積める荷物を幅広に戦略的に集めているので、空で帰るということは少ないと思います」
「そうですか。私は逆に専属の輸送会社さんが帰りは空で帰っているようなら地域の産物を載せてもらえるような連携ができないかと思ったのです」
「それは当社だけの判断ではできませんね。もっとも、帰りのトラックに余裕があるからなんでも載せられるかというとそうでもなくて、たとえば匂いがつくようなものは断られます。やはり口に入るものを運んでいる関係で、そうした影響は避けるのだと思います」
「なるほど。では最近の消費者の飲料嗜好はいかがですか」
「はい、かつては飲料と言えば甘いものが好まれるという時代が続きましたが、最近では逆に味のないものが好まれます。一番売れているのは水です。次がお茶、そしてブラックコーヒーと続きます。甘さの入ったものは現代消費者の好みからは外れているようですね。私の娘などを見ていても、コーラを飲むのにカロリーゼロのものを当たり前に飲んでいます。もう舌がその味に慣れてしまったのかもしれませんね」
飲料にも流行や廃りがあって、次の時代の流れがどこに来るのかを各社各様に悩みながら研究しているようです。
たかが飲み物ですが、ビジネスや物流の流れという切り口で見ると案外面白いものですね。今日も勉強になりました。