稚内市にはサハリンに何度も行って昔からの様子に詳しい人が何人もいますが、今日はそんな一人とサハリン話で盛り上がりました。
サハリンの印象を訊かれたので、「圧倒的なアウェイ感にさいなまれました(笑)。なにしろロシア語の看板は読めないし英語の併記もないし、日本語はもちろん英語も通じない。買い物のための自由時間でも最低限の買い物しかできませんでした」と答えました。
最初は(サハリンの人たちは日本人観光客に来てほしいと思っていないのではないか)と思ったのですが、実は日本だって観光立国だなどと言い始めたのはここ十年くらいなもの。
二十年前がどうだったかと思うと、海外からの観光客を迎えるなんてことはほとんど考えたことがなかったし、「お・も・て・な・し」などと言ってもこれもごく最近の事です。
「外国からの観光客の受け入れということがまだ本格的に始まっていない印象ですね」
するとその方は、「いやあそれでも昔から比べると大幅に改善されましたよ」とおっしゃいます。
「かつてソビエト連邦の社会主義が崩れたときにも私は現地へ行ったんです。そして『あなたたちもペレストロイカで改革ということになるのですから、観光についてもっと考えてはいかがですか』と言ったんです」
「ははあ、その頃からのことですか」
「でもそのときの相手の反応は『観光ってなんですか』というものでした。観光なんて概念がないんですね。そのころは我々がいってもまともに泊まれるホテルと言えば二つくらいしかありませんでした。今ではもっと多いでしょう?それもだいぶ進歩したんです」
「なるほど」
「それと同時に、『日本人の観光客が来たらお土産を買うものだからそういうお店や品ぞろえも考えておいた方が良いですよ』って言ったんです。そうしたらまた相手の返事が『お土産ってなんですか』でした(笑)。『日本人は旅の記念として家族や友人のために、旅先のものを何か買うものなんです。フェリー乗り場だったら、きっと旅行で残ったルーブルや小銭を使い切るから、こういうところで何かお売りなさい』とアドバイスしたものです。そうしたら翌年に屋台みたいな物売りができて、そのうちにお店になっていました。だから観光への考え方も受け入れながら段々に理解が深まっていくんだと思うんですがね」
実はサハリンの経済が上向いたのも、少し前に石油や天然ガス開発が大いに行われたサハリンプロジェクト後のことでまだ最近なのだそう。意識改革と共に、経済的な余裕も必要なのかもしれません
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また、ロシア語が分からないので現地でまごついたという話をしましたが、これも実は最新の技術が解決するかもしれません。
私もスマホを持っていきましたが、今になって冷静に考えるとスマホにはロシア語変換機能があるので、日本語で打ち込んでそれをロシア語に変換して画面を見せればもう少しマシなコミュニケーションが取れたかもしれません。道案内だって、スマホで位置情報を掴めば良いのです。
ドコモショップへ行って訊いてみたところ、諸外国でも一日30MBまで使い放題というプランがあってロシアであれば一日1580円とのこと。事前にこれに接続するアプリを入れておけば、現地でそのアプリを起動するだけで定額でのスマホ利用ができます。
こちらから外国旅行をするときにそういう準備をすればよい、と思うのならば、インバウンドとして日本へ来る方だってそういう準備をするはずです。せめてホテルの受付にはタブレットを何台か置いてあって、それを仲介してコミュニケーションを取ることで、対話をかなりスムースにすることが期待できます。
高いお金をかけて印刷物を用意するのも良いですが、ネット環境とネットの向こうに様々な情報を置いておくことが少ないお金で情報提供をするこれからのツールになりえると思います。
海外へ行くときも海外から迎えるときも、観光技術のイノベーションを駆使して障壁を下げたいものですね。