北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

美深の滝を巡る冒険~続「羊をめぐる冒険」

2015-09-23 21:43:36 | Weblog

 旅をするにはまず宿だ、ということで美深周辺のホテルやペンションをさがしましたが大型連休ということでどこも満室。

 やっと取れたのが駅前の昔ながらの長期連泊宿。学生の頃にアルバイトで地方へ出張した時にお世話になったような、お弁当の三食付でお風呂と寝に帰って来るだけの様なお宿です。

 トイレも男女別じゃないし施設もサービスもとても最近流行の宿とは言えませんが、昔ながらの触れ合いのサービスがあります。

「こういうお宿が商売を続けていくというのはどういうお客さんが相手になるんですか」
「うちの夏は工事現場の下請けの運転手さんが多くて、冬はスキー合宿で満室って感じで、あとは観光客ですが自転車で来たとかバイクで来たお客さんですね。『雨が降ってきたんでどこか泊めてもらえますか』って観光協会に連絡が入ると、そこから『泊められる?』ってくるのはうちなんです」

「他のお宿へは行かないんですか?」
「最近このあたりのお宿は高齢化しているのと、休日は休みたいというので工事関係者と合宿しか受けないという宿が増えているんです。でも宿って泊まりたい人がいたら泊めるのが仕事だと僕は思っているものですから。でも眠いっス(笑)」

「眠い?」
「今泊まっているダンプの運転手さんに今日も朝5時半出発のために弁当を持たせて朝食を出しました。だから起きるのは朝2時半なんです。そして夜7時くらいに帰ってきたら夕食を食べて一杯飲みますからそれを片付けてってやると寝るのが十時くらいにはなっちゃうし。だから日中が眠たくて仕方ないんです(笑)」

「工事関係者は多いんですか?」
「今は多いです。音威子府の向こうでトンネル工事をしているので相当な数の業者さんが入っていますよ。こういう仕事も口コミが効いて、融通が効くとなると『誰それさんに教えられたんですけど泊まれますか』っていう問い合わせが結構来て、基本空いていれば受け入れてます」

 朝食付きで一人一泊5千円弱ですみました。面白い管理人の大将で楽しい旅になりました。


      ◆ 


 そうしていよいよ美深町内の探検の始まりでまずは滝めぐり。村上春樹は"十二滝町"という架空の町を登場させましたが、美深には全部で十六の滝があるのだそう。しかしそのうち簡単に車で行って見られるのは五つの滝であとは登山装備でなくてはいけないとのこと。真実に分け入るにはこちらもスキルが求められます。

 まずは美深駅から車を走らせて15分ほどで右に看板が出てくるのが「激流の滝」。岩の間が細くなったところを水が激流になっています。滝が良く見えるように物見台もできていてなかなか良かったです。

 なお滝の写真には動画をリンクさせていますのでどうぞご覧ください。



 ふと見ると下流のたまりのところでニジマスのペアが産卵間近でした。雌は産卵床を作ろうとし、雄は卵を狙う小魚を追い払っている様子が間近に見えました。秋を感じますね。
【ニジマスの産卵間近の様子 29秒】 



 続いては「高広の滝」です。激流の滝からもう十分ほど車を走らせると右側に高広パーキングという休憩所が出てきますが、そこから下を流れるペンケニウプ川の対岸に二条の滝が見えます。地図を見ても川には名前がありません。
 しかも右側が高広の滝で左の滝には正式な名前もないのだそう。ちょっと可哀想ですね。
 このパーキングの向かいにはトロッコ王国で走らせているトロッコの折り返し点があって、トロッコが続々と集まってきていました。


【美深町 高広の滝15秒】 


  道道からトロッコ軌道の踏切を超えて北へ向かう林道を走ります。川に架かる橋を渡って大きく左へ曲がったところでちょっとした駐車場があり車はそこにとめて川の上流へ100mほど歩くと大きな滝が見えます。これが「深緑の滝」。
 岩伝いにそろそろ行けば滝の真下まで行くことができて、飛沫もマイナスイオンもどっさりと浴びることができます。妻も私もテンションが上がって、動画撮影にちょっと失敗しました(笑) 
 滝から流れる渓流はイワナがいそうな感じですが、残念ながら竿を入れても反応はありませんでした。違う季節に来ようっと。


【美深町 深緑の滝25秒】 


 松山湿原へ向かう途中の道を右へ曲がって向かい林道を進むと出てくるのが「雨霧の滝」。この滝もかなり近くまで行くことができますよ。


【美深町 雨霧の滝15秒】 


 雨霧の滝から向かって左側の山道を100メートル、約十分ほど登ると見えるのが「乙女の滝」。垂直にドンと落ちるのではなく斜めの岩盤を滑るように流れ落ちてゆく姿はちょっと優しげな感じです。


【美深町 乙女の滝15秒】 


 お手軽にみられる五つの滝を見てから今度は道北三大秘境松山湿原へと向かいました。ちなみに三大秘境というのは、ここ松山湿原の外に雨竜沼湿原と浮島湿原の三つのこと。いずれも「高層湿原」というタイプの湿原です。
 高層湿原というのは、枯れた植物が腐らないままに泥炭化してそれが溜まりすぎて周りの水位よりも高くなってしまったために水からの栄養が取れなくなり貧栄養状態になった湿原の事。標高が高いところにある湿原のことではないので注意です。
 高層湿原になると栄養状態が貧しくなるために、低層湿原とは違って独自で栄養を取れる植物が登場します。その代表的なものがモウセンゴケでいわゆる虫を食べる食虫植物です。ミズゴケの中をよ~く見ると…ありました!掌に細かい毛がたくさん生えているような赤い葉がありました。ちょっと不気味ですが、必死に環境に耐えて生きる植物ですね。


【道北三大秘境の松山湿原に到着】 


  【モウセンゴケって不気味ですが必死で生きているんですね】



 「羊をめぐる冒険」の中には、十二滝町で山の上にある別荘を訪ねるシーンがあって、かなり高い山に登ったところでこんな描写があります。

  …我々はリュックを地面に置き、とくにこれといって話すこともないまま二人であたりの風景を眺めた。眼下の深い谷底には銀色の川がゆるやかな細い曲線を描き、その両側は厚い緑の林に覆われていた。谷を隔てた向こう側には紅葉に彩られた低い山なみが波うちながら連なり、そのかなたには平野部がぼんやりとかすんで見えた…

 途中の山道から見えた仁宇布一体の風景がそれなのかな、と考えながらの軽登山。村上春樹さんはこの風景を見たのでしょうか。



 「羊をめぐる冒険」をめぐる冒険はまだ続きます。


コメント
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