さて「羊をめぐる冒険」では、主人公は旭川から北へ向かいそこで東へ向かう汽車に乗り換えて終着駅に到着します。
この線路がおそらく美幸線だろうというのがハルキストたちの推測ですが、この美幸線も悲しい鉄路。
1964年というオリンピックが開かれた年に美深から仁宇布まで開通したものの、運行中は「日本一の赤字ローカル線」として全国にその名を知られ、わずか21年後の昭和60年にその歴史を閉じました。
しかしその跡に平成10年から地元NPOによって「トロッコ王国」として人の乗れるエンジン付きトロッコが運行され、今では全国各地から多くの観光客が訪れる人気のアトラクションとなりました。
走るのはかつて本物の汽車が走ったレールの上で、鉄橋やコンクリート橋もそのままいくつもの川をトコトコと渡って行きます。木々のトンネルをくぐり、国道と並行しながら草原を走るトロッコは年間約1万人以上の来場者を迎えています。
私たちは滝見物の合間にここトロッコ王国を訪れて乗車の予約。申し込むと王国のパスポートと記念乗車券がもらえます。
渓谷の合間や野原を風を切って走るエンジン付のトロッコ。往復10キロを約40分の間自らの運転で走ることができるテーマパークは、全国でもここだけ。
普通自動車免許所持者が運転席で運転できるのです。
いよいよ出発。線路が合流するところはゆっくり走ります。
【トロッコの出発】 https://youtu.be/ET9U3AjyF3w
快晴の道北をトロッコで走るのは爽快です。
【帰路にカーブの橋を渡るトロッコ】 https://youtu.be/9mMtNREVWTE
往復10kmの旅もおしまい。思った以上に楽しい旅でした。
【トロッコ列車の終点】 https://youtu.be/fB2jeQsG67c
トロッコって単線なので、どうやって次に乗る人のために向きを変えるのかな、と思ったら人力の転車台でした。さすが!
【人力転車台】 www.youtube.com/watch?v=l-71HgDo9J0
仁宇布からは美幸線の予定線に沿う形で道道を北東へ向かって歌登へと出て稚内へ戻ったのですが、途中に「羊をめぐる冒険」の中で登場する別荘のモデルなのではないか、というファームイントントさんを見て来ました。目の前の牧草地には羊がたくさんいて、羊をめぐる冒険にふさわしい。
本当は宿泊したかったのですが、残念ながら連休中は満室とのこと。次の機会には泊まってみたいお宿です。
終着駅と言いながら本当はまだ先に延ばしたかった鉄道の現実の姿と、たくましくそれを活かした観光のコンテンツ。開拓一世の悲願だった鉄道も地域の人たちが地元を去ってゆくための交通になってしまいました。いろいろなことを考えさせられた美深の旅。
フランス人夫婦の一言に端を発した「羊をめぐる冒険」をめぐる私の冒険は良い旅となりました。ちょっとしたことが意外な旅のきっかけになるものですね。