こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『[新釈]走れメロス 他四篇』森見登美彦

2015-07-21 19:31:04 | 読書感想
五人の文学小説作家の有名な短篇を、森見さんが現代に置き換えて書いたものです。

表題作になるだけあって、やはり「走れメロス」には笑わされながらも妙に納得してしまい、これはこれで名作かもしれないと思ってしまいました。

元が全然違う作品であるはずの「山月記」と「桜の森の満開の下」は、森見さんにかかると、似たような境遇の学生がほんのわずかな選択の違いだけで別々の、しかし不幸な人生を歩んでしまうというものになり、まるで一人の男のパラレルワールドをのぞいているような気分になりました。

「藪の中」は、一つの出来事を多人数の別々の視点から見た面白さがあり、彼らがそれぞれにとっての真実を語っているのなら人の記憶も当てにならないと思いました。まあ、大抵は嘘を混ぜていると考えてしまいますが。

「百物語」は、それまでのオールスター登場のにぎやかさの中に、ふと紛れ込むかすかな恐怖が味わえます。
もちろん、彼は本当に存在するものかもしれません。

面白かったです。
コメント
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