興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

マコロンの長い旅

2009-09-27 | チラッと世相観察

マコロン(写真) は、フランス菓子マカロンが本(もと)になったお菓子であるという。
ともに焼き菓子であり、名前の近似性からもそれはその通りなのであろうが、実際のところマコロンとマカロンはずいぶん違う。

マカロンはデパートや高級洋菓子店で扱われるが、マコロンは近所のお菓子屋さんが似合う。
マカロンはきれいに缶入り包装され贈答品にも使われるが、マコロンをそのようにする人は、マアいないであろう。

つまりマコロンは、もう長い間 (少なくとも戦前からと思われる) 日本にあって、独自に発展し、庶民に愛される 「日本の駄菓子」 としての地位を確立したのである。

わたしは小さい頃 (数十年前)、この甘くて香ばしいマコロンが大好きであった。 マカロンなど、その存在すら知らなかった。

ところで、唐突ながら、「ことわざ」 の世界にもこのような “西洋生まれの日本育ち” があるようだ。

先日読んだ 『ことわざの謎―歴史に埋もれたルーツ』 (北村孝一・著/光文社・刊)という本によれば、 「二兎を追う者は一兎をも得ず」 「一石二鳥」 「艱難汝を玉にす」 などがその例である。
それぞれ、その表現の簡潔さや、古文調、漢文調の格調の高さからすると日本古来のことわざのようにも見えるが、実際は明治になって西欧から入ってきたものだという。

同書はこれらのことわざが、どのような歴史背景の中で、どのような表現(訳語) の変遷を経て日本流に定着したのかを、実証的にわかりやすく説いている。
ともあれ、マコロンの歩みには、なんと西洋のことわざの 「日本化」 と相通ずるものがあったのである。

そのマコロン、最近はほとんど見られなくなってしまった。 (上の写真のマコロンは、「カタログ販売」 で偶然見つけ、懐かしくなって購入したもの)
想像するに、高度経済成長期以降の「豊かさ」の中で菓子類も多様化が進み、マコロンはそこに埋没してしまったのではなかろうか。
マコロンは今後どういう歩みをするのであろう。 マコロンの旅は続く。

2009.9.27

『ことわざの謎―歴史に埋もれたルーツ』北村孝一・著/光文社新書
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334032296