興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

ひとかたけ (好きな言葉)

2006-03-06 | 言葉ウォッチング
「一片食」と書く。ひとかたき、ともいう。
 一回分の食事という意味である。
 わたしが小さい頃、この言葉を母がよく使っていた。「これでひとかたきになる」と。
 収入も多くなく、食べるものにも時に事欠く状況では、例えば少しばかりの冷えた蒸かしイモでも、分けあって立派なひとかたけになった。
 わたしの家がというより、昔はどこの家でも多かれ少なかれそういう状況だったと思う。
 わたしが中学生だった昭和30年代の前半には、貧しくて学校に弁当を持ってこれない級友もいた。
「ひとかたけ」という言葉には、一食一食を工面せねばならない気苦労と一回一回の食事の得難さ、ありがたさが含まれていたように思う。

 向田邦子のエッセイのどれかにもこの言葉が出てきたが、飽食の時代といわれてひさしい現代、いずれ死語になってしまうのだろうか。
2005.05.21

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