冒頭、モノクロ画面の荒涼とした風景から現れた男が入って行った建物は映画の撮影所で、そこで撮影中の監督に男が話しかけると監督の学生時代の数学の教師だとわかり、そこでどこか不気味な教師は映画の原案を話す。
原案というより世界観で、原爆を作ったものは人類最悪の罪を犯したとか、悪魔が課す世界の破滅などではなく日常が繰り返されることこそ地獄で、悪魔も神が作ったものだといったことを話す。
前者はのちの「冬の光」に、一種の映画内映画構造―厳密にそうなっているわけではなく、語られた原案が直接映像化されるわけではないが―は「仮面ペルソナ」につながるモチーフ、などすでにベルイマンらしさは現れている。
望まない妊娠をして産んだ子供を「処理」した女が主人公で、赤ん坊の泣き声に導かれて奇怪な枯れ木だらけの室内を歩いていくとバスタブに赤ん坊の人形が浮いていて、妊娠させた男がその人形を掴んでひねると魚に変わりひねり殺された魚をまたバスタブに浮かべる、といった悪夢にすぐれたセンスを見せるのは「野いちご」の前兆。
日常的な地獄、とはベルイマンの典型的なモチーフで、ここでベルイマンが作風をひとつ確立したと評価される所以でもあるだろう。
オープニングで文字のタイトルが出ず、声でスタッフキャストの名前が読み上げられる。
Fängelse - IMDb
Fängelse, 1949 - Verk - Ingmar Bergman -