とはいえ見た動機とすると、アラン=ロブ・グリエ作品だからというより、もっぱらアニセー・アルヴィナ目当てで、当時21歳の美貌を大画面で見られて満足。
ただファンなのかというと微妙で、何より代表作でデビュー作の「フレンズ ポールとミシェル」をあまりちゃんと見ていない。しかし続編の「続フレンズ」は日本航空のキャンペーンガールを務めた時に来日して、TBSホールで上映したのをスクリーンで見ている。
というより何より、舞台挨拶した実物を近距離で見られたのが忘れられない。
それから幾星霜、2006年に53歳で肺がんのため亡くなったこともしばらく後になって知った。
辛うじて高田賢三監督の「夢・夢のあと」に出演したのを除いて出演作が日本にはとんと入ってこなかったからで、同作もテレビ放映されたきりビデオもネット配信もされていない。
しかし映画のありがたいところで、ここで若い時の一番美しい姿をスクリーンで見られる。
モノと人間とを同じ調子で描く。俳優と人形、血と瓶の中の赤い液体、抽象的な舞台のような白バックに骨組みだけみたいなベッドや鉄格子だけがむき出しに置かれた装置。
ちょっと実相寺昭雄監督、池谷仙克美術の「曼荼羅」みたいでもあるけれど、「曼荼羅」の方が先の71年製作。
魚拓ならぬ女体拓などまじめにえんえんと撮っているのが変態的で、グリエ脚本をアラン・レネが監督した「去年マリエンバードで」みたいな格調高い調子にならず、妙におそらくわざと安っぽく作り物っぽさ、キッチェで趣味的な調子に向かっている。
ヌードがふんだんに出てきて、製作されて間もない70年代80年代に公開されていたら一々ヘアにボカシがかかっていたであろうことを考えると、遅れて良かった気もする。
ジャン=ルイ・トランティニャンやミシェル・ロンスデールといった一流俳優が出ているけれど、何だか変な薄い口ひげを生やしたりしておちょくられているみたいな、それを当人たちもむしろ楽しんでいるみたいな扱い。
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