prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「母というだけ」

2018年12月19日 | 映画
監督のアルフ・シューベルイ(今回の国立映画アーカイブの上映プログラムの表記ではシューべり)というとベルイマンの師匠、とかカンヌのパルムドール作「令嬢ジュリー」の人、という先入観がある。
この二本しか日本では劇場公開されていないし、これが作られたのは1949年で、前記の「もだえ」(44)と「令嬢ジュリー」(51)の間。そのせいか、基本的にはリアリズムなのだが、特に冒頭ずらっと押し黙ったような労働者たちが動かないでいるところをずうっと移動で撮っているのがタイトルバックで、タイトルが終わると自然に動き出す、という具合に様式化に向っているところもある。

主演のエヴァ・ダールベックがグレタ・ガルボと系統が近いくっきりした美人で、「愛のレッスン」とか「夏の夜は三たび微笑む」などのベルイマン作品で有名。背中からとはいえヌードで登場。
マックス・フォン・シドーが最初の愛人役で出てくる。1929年生まれだから、この時なんと二十歳で、映画デビュー作らしい。普通だったら若いねーとなるけれど、ベルイマン作品デビューの「第七の封印」の時の28歳とあまり印象が変わらず、妙に老けている。

一時間41分という普通の、というか今では短いくらいの長さなのだが、大河小説的な時の重みが出ている。

タイトル通り、未婚のまま四人の子供を産んで育てる女性の話なのだが、周囲の偏見やいわれのない蔑視の描写に、この後スウェーデンはバースコントロールとそのための性教育に力を入れる政策に舵を切ったのかと思わせる。

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