99分という最近珍しいくらい短い時間にてきぱきとストーリーを語っていて、いくつかの評でドン⋅シーゲルの名前が出ていたが(出だしなど「突破口!」だ)、なるほどあの尺と予算が限られた中で効率性を芸にまで高めたB級アクションの魂が再現されたよう。
内容が相当に苦いところも。
犯人二人の経歴を現場と捜査本部のカットバックで一気に説明したり、小道具を使ってキャラクターの逆転を表したり、セリフによる説明抜きで事情をはっきりわからせるクレバーな作り。
一方で時間が停滞するシーン、犯人と刑事が銃を向けあって逮捕か射殺か人質の死かというシーンばかりでなく、事件の真相を解説するセリフ主体のシーンでも役者たちの力量がモノを言って緊迫感が途切れない。
アメリカの映画やドラマではいつもながらのことだが、ちょっとしか出ない脇役のキャスティングと演技にそれぞれ味と工夫が凝らされている。
出だしの少年時代の主人公の警官だった父親の葬式の場面で、何百人という警官たちが整列して参列しているのを真上からの大俯瞰で捉えたカットが強い印象を残すが、これがラストの方につながってくる構成の巧みさ。
マンハッタン島にかかっている21の橋をはじめ、すべての出入口をふさぐ大がかりな捕物になるわけだが、その画のスケールの大きさと迫力はさすがにアメリカ映画で、レインボーブリッジひとつで大騒ぎするのとは桁が違うと思い知らされる。
これが最後の作品になったチャドウィック⋅ボーズマンは信じられないくらい機敏に動き、演技にも気迫とキレがある。
USBメモリの扱いがやや曖昧なのは惜しい。