「ニキータ」とか「レッド⋅スパロー」みたいな底辺這いずりまわっていた女を訓練して仕立てた殺し屋ものだが、天涯孤独というわけではなく家族がいて亡父以外とは縁が切れているわけではないのが珍しい。
途中まで成績優秀だったのがアルコール依存症になったのがきっかけで身を持ち崩し今でも断酒している描写がかなりリアルで、AA(アルコホリック⋅アノニマス=無名のアルコール依存者の会)の自分語りで父親の裏切りを話すのが脚本テクニックとして上手く、内容も重い。
ジェシカ⋅チャスティンとしてはむしろこういう芝居場が見どころで、アクションシーンはよくこなしてはいるけれど役の設定自体の詰めが甘いので、ややご都合主義に見える。
酔っぱらいを殺し屋に仕立てるというのはリアルに近づけるとムリがあるのが目立つ。肝腎な時に酔っていたらどうするのか。
殺し屋としての仕事ぶりが必ずしも手際いいわけではなくて、標的を殺す理由を詮索したりするから、ずいぶん使い勝手悪くないか疑問に思った。
デンゼル⋅ワシントン主演の「フライト」でも断酒していたアルコール依存症者がスリップするきっかけはスピリッツのポケット瓶だったが、これもそう。
というか、ポケット瓶をもって歩いて人目を忍んで物陰できゅっと空ける、というのは、アメリカのドラマや映画で、こいつアル中と示す定番の描写になっている。
コリン⋅ファレルとの対決がなんで水入りになるのか、よくわからない。
ジーナ⋅デイビスが母親役というのになるほど感あり。この人自身「ロング⋅キス⋅グッドナイト」で殺し屋役やってたものね。