博士と狂人というタイトルだが、メル・ギブソンは独学で学問を収めたので博士号をとっておらず、ショーン・ペンの本物の博士は精神に異常をきたして幻覚の末に殺人を犯すという二人とも両方を兼ねている状態。
メル・ギブソンとショーン・ペンという実生活での素行で問題を起こしたスターというのが面白い。
ギブソンの方が最近は狂的な目付きを生かした役が多いのだが、ここでは穏やかな方の役をやっているのがまた面白い。
ペンが精神病院に監禁されているので二人が直接顔を合わせる場面が限られ、もっぱら手紙のやりとりで辞書編纂作業が進むのが、文字言語の方が空間を越えていく力をそのまま表現した。
もともと言語は話し言葉だけしかないのが普通だったのだが(日本語も漢字を万葉仮名として音を表記するまで文字を持たなかった)文字を持つことで空間と時間を越えた。
文字を持たないまま消滅した言語は数知れない。
その意味で、七つの海を支配していた頃のイギリスにあってはスタンダードになる英語を世界の隅々まで届ける使命を辞書が担うという発想は自然だったろう。
現に今でも時間を越えて英語は良くも悪くも世界のスタンダードになっている。
日本の大漢和辞典の編纂史なんかドラマにするとおもしろいかもしれない。
監督がP・B・シェムランとファイド・サフィニアと二つ名前を持っている。どうなっているの。