イギリス伝統のパプリック・スクールの生活をこれだけ重量感のあるリアリティで、偽善やいやらしさ込みで描けた映画も珍しいのではないか。その一方で細菌のアップが突然入ってきたり、ときどき白黒画面がはさみこまれるのが現実感を漂白するような効果を出し、じわじわと現実べったりから離陸するのを準備する。反抗的な生徒を鞭打つにもいちいち儀式的な気取りを見せるあたりのいやらしさ。
監督のリンゼイ・アンダースン自身パブリック・スクールからオックスフォードを出ているから一種手の内に入っている観がある。
繰り返し讃美歌が繰り返されるあたり、ほとんど「炎のランナー」(アンダースンが役者としてケンブリッジのキーズ・カレッジの校長役で出演)のムードだが、全体を章立てになっているラストの一章がCrusaders(十字軍)となるのは、今見ると世界を覆う宗教的な対立を思わせ違う意味で不穏に感じられる。
若きマルコム・マクドウェルのふてぶてしさ。彼自身が労働者階級の出身でパブリック・スクールでは場違いもいいところで、上流階級内部の造反、というのは限界のようでもあるが今みたいにけっこういい家の出で高い教育を受けた若者がオウムに入ったりISに走ったりする変な風になるのと比べたくなる。予言的と言ってしまうのは早計だが地下水脈でつながっているところはあるだろう。ただしここでの反乱はひねこびたところがなくかなり痛快で健康に思える。
壁にゲバラやジェロニモのポスターが貼ってあるのが1968年製作らしい。
マクドウェルはアンダーソンの監督作8本のうち3本に主演している(あと二本は「オー!ラッキーマン」「ブリタニア・ホスピタル」)
当時とすると生徒が銃を持って反乱を起こすのがショッキングだったのかもしれないが、今見るといとも取り澄ました上流の連中がちょっとつつかれたら生徒たちよりはるかに大量の銃を取り出して弾圧にかかるのがリアル。
間に入ろうとする「進歩的」な教師があっさり殺されるのも妙に生々しい。今だったら後ろから撃たれるかもしれない。