「まえがき」
残暑お見舞い申し上げます。
今日は「立秋」
暦の上では、秋を迎えましたが、まだまだ暑いですね。
お盆休みも目前で、今週は上半期の踏ん張り時です。
皆さん、無理しないように、がんばってくださいね。
そして明日から、いよいよ北京五輪も始まります。
甲子園では、連日球児たちの熱戦が繰り広げられています。
それにプロ野球も、どんな展開になることやら・・・。
とにかく、暑い。
昨日の夕方降ったバケツをひっくり返したような雨に
街路樹や公園の草花が救われたような感じです。
あと少し、あと少しだけ、暑いのを我慢して乗り切りましょうね。
さて、ブログでは遅れております、「ニューヨーク恋物語」の更新です。
楽しみに待っていてくれたなら、嬉しいです。
「ニューヨーク恋物語 第8章横浜編」、いよいよ大沢と今日子の別れの日。
恋人たちを遠く離れ離れにさせるのは、可愛そうですね。
でも、それをあえて遠距離に持っていく作者の心情。
距離をおくことで、見えなかった部分が見えることってありますよね。
恋人でも、夫婦でも、親子でも。
この2人は、そんな試練の中でも、気持ち変わらず、一途に想い合ってほしいと・・・
そんな作者の願いから、このような物語ができたのかもしれません。
上の3枚の写真は、「タイムズ・スクエア」で、撮ったものです。
尚、今回の物語の、挿絵の写真は、全て私が撮ったもので
私のHP「マドンナの夢ギャラリー」で使用したものです。
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ミューヨーク恋物語2008 BGM 愛し君へ(森山直太朗)
ニューヨーク恋物語 第8章横浜編
みなとみらいでの最後の夜は終わった。
昨夜、ホテルの部屋から見下ろした夜景は
たぶん二人にとって生涯忘れられないような気がする。
いつまでもこのスイートルームでいたかったが
もうそんな時間は残っていなかった。
早々にホテルをチェックアウトすると
二人は今日子のマンションに戻った。
昨日は予期せぬみなとみらいでの夜だっただけに
出発の用意は何も出来ていなかった。
部屋に戻ると、二人はスーツケースに荷物を詰め始めた。
「会社の書類はみんな寝室の机の上にまとめてあるわ。」
「梅干と、ちりめん山椒と、塩昆布を少しだけ入れておく。」
「ネクタイ、新しいのを2~3本買っておいたよ。」
「あなたのワイシャツは、すべてアイロン掛けしてあるわ。」
「この紙袋は、ニューヨーク支店の人たちへの日本みやげが入っている。」
「あなたは、すぐにお腹を壊すから、整腸剤も買って来た。」
「横浜の八幡さまのお守り、入れておくから。」
今日子はまるで大沢の妻のように動いてくれた。
年は下でも、いつも姉さん女房のようだった。
この一週間、仕事をしながらずっと大沢の世話をしてくれた。
たぶん眠る時間など、ごくわずかだったに違いない。
けれど朝になると、明るい笑顔で「おはよう!」と言ってくれた。
荷物の準備が整うと、今日子は大沢に言った。
「ねえ・・・ この部屋の鍵を持って行って。」
大沢は言葉の意味がわからなかった。
「時差があるからたいへんだけれど
この鍵で、毎晩私の部屋に浸入して。
私、あなたを待っているわ。」
「毎晩、浸入していいの? 僕は、毎晩オオカミになっていいの?」
「そうよ。 でもニューヨークのオオカミは優しいの。
泣いている私の涙をそっと拭いてくれ、怒っている私の気持ちを静めてくれ
笑っている私と一緒に笑ってくれ、落ち込んでいる私を励ましてくれ
哀しみは二分の一に、喜びは二倍にしてくれるの。」
「赤頭巾ちゃんのオオカミとは、大違いだ。
僕は、正義の味方のオオカミなんだね。」
「この鍵で毎晩、私の心の扉を開いて、私の心にいつも触れて。」
「わかった。
ニューヨークのオフィスのランチタイムが、丁度日本の真夜中だ。
オオカミはランチもしないで、今日子のところに来るよ」
大沢の心を繋ぎとめようとする、今日子の女心がいじらしかった。
この鍵は、今日子の心の扉を開く鍵。
今日子のSOSを開く鍵。
大沢は大切に、背広の内ポケットに入れた。
横浜から成田までの道のりは、今日子が運転した。
今日子はいつも安全運転だった。
「ユーミンの曲をかけると寂しくなるから、FMでいい?」
ユーミンの曲には、思い出がたくさんありすぎた。
アルバムが出ると、真っ先に買って二人で聴いた。
車の中では、ほとんどユーミンしかかけなかった。
そして二人で、湘南や横須賀や茅ヶ崎に出かけた。
時には房総あたりまで車を走らせた。
代わる代わる車を運転して・・・・。
今日子をサイドシートに乗せると、今日子はナビゲータより詳しいナビをした。
今日子は、地図にない道を冒険しながら目的地へ行くのが好きだった。
守りの姿勢で、堅実な大沢に対して
今日子はいつも攻めの姿勢で、冒険好きだった。
大沢の不安をよそに
今日子はナビゲータを無視して、どんどん自分流のナビをしていった。
今日子といると、大沢はいつも多くの発見をした。
そんな前向きで、奔放な今日子がとても好きだった。
高速道路は渋滞もなく、車はお昼過ぎには成田に着いた。
二人は国際線の出発ロビーにいた。
「私、夏休みを取って、ニューヨークに行くわ。」
「待っているよ。 早く今日子にニューヨークを案内したい。
今日子と行きたいところがたくさんある。
ニューヨークの夜は、世界中のどこよりも、エキサイティングだ。」
「自由の女神、セントラル・パーク、マンハッタンの夜景。
ウエストサイドやイーストサイド・・・ 」
「ミッドタウンに、通称リップスティック・ビルと呼ばれるビルがある。
遠目に見ると、ビルが口紅の形をしている。
そこにとても美味しいレストランがる。」
「他にも素敵なカフェがたくさんある。
ニューヨーカーは、その時々のシーンに合わせて、カフェを利用する。
今日子に、そんなニューヨークを見せてやりたいよ。」
「夏の終わりには、きっとお休みを取るわ。
そして私、ニューヨークに行く。」
出発ロビーにアナウンスが流れた。
「15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
只今、搭乗手続き中。 出発の方は、お急ぎください。」
大沢は席を立った。
「お酒の飲み過ぎに気をつけて。」
「朝のコーヒー、ブラックはダメよ。」
「毎日、食事はきちんと取って。」
「どんなに帰宅が遅くても、シャワーは浴びてね。
きっとあなたの疲れを取ってくれる。」
「雨が三日以上降ったら、私たちのてるてる坊主を吊るして。」
今日子の口から止めどなく言葉が続いた。
「いつもメールして。」
「いつも私を想って。」
「いつも私を愛して。」
「I Love You と、いつも私に言って。」
今日子は大沢に向かって懇願した。
「わかった。 すべてわかった。 今日子の言う通りにするよ。」
今日子は目を潤ませた。
「私、泣いてなんかいない。」
精いっぱいの強がりを言った今日子の頬に、涙がこぼれ落ちた。
そして二人は、もう一度しっかりと抱擁して別れた。
今日子は展望デッキから、大沢の乗った飛行機を見送った。
飛行機はゆっくり滑走路を移動し始めた。
15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
定刻どおりの出発。
大沢を乗せた飛行機は、空の彼方へ消えて行った。
第9章へ 続く・・・
残暑お見舞い申し上げます。
今日は「立秋」
暦の上では、秋を迎えましたが、まだまだ暑いですね。
お盆休みも目前で、今週は上半期の踏ん張り時です。
皆さん、無理しないように、がんばってくださいね。
そして明日から、いよいよ北京五輪も始まります。
甲子園では、連日球児たちの熱戦が繰り広げられています。
それにプロ野球も、どんな展開になることやら・・・。
とにかく、暑い。
昨日の夕方降ったバケツをひっくり返したような雨に
街路樹や公園の草花が救われたような感じです。
あと少し、あと少しだけ、暑いのを我慢して乗り切りましょうね。
さて、ブログでは遅れております、「ニューヨーク恋物語」の更新です。
楽しみに待っていてくれたなら、嬉しいです。
「ニューヨーク恋物語 第8章横浜編」、いよいよ大沢と今日子の別れの日。
恋人たちを遠く離れ離れにさせるのは、可愛そうですね。
でも、それをあえて遠距離に持っていく作者の心情。
距離をおくことで、見えなかった部分が見えることってありますよね。
恋人でも、夫婦でも、親子でも。
この2人は、そんな試練の中でも、気持ち変わらず、一途に想い合ってほしいと・・・
そんな作者の願いから、このような物語ができたのかもしれません。
上の3枚の写真は、「タイムズ・スクエア」で、撮ったものです。
尚、今回の物語の、挿絵の写真は、全て私が撮ったもので
私のHP「マドンナの夢ギャラリー」で使用したものです。
</object>
ミューヨーク恋物語2008 BGM 愛し君へ(森山直太朗)
ニューヨーク恋物語 第8章横浜編
みなとみらいでの最後の夜は終わった。
昨夜、ホテルの部屋から見下ろした夜景は
たぶん二人にとって生涯忘れられないような気がする。
いつまでもこのスイートルームでいたかったが
もうそんな時間は残っていなかった。
早々にホテルをチェックアウトすると
二人は今日子のマンションに戻った。
昨日は予期せぬみなとみらいでの夜だっただけに
出発の用意は何も出来ていなかった。
部屋に戻ると、二人はスーツケースに荷物を詰め始めた。
「会社の書類はみんな寝室の机の上にまとめてあるわ。」
「梅干と、ちりめん山椒と、塩昆布を少しだけ入れておく。」
「ネクタイ、新しいのを2~3本買っておいたよ。」
「あなたのワイシャツは、すべてアイロン掛けしてあるわ。」
「この紙袋は、ニューヨーク支店の人たちへの日本みやげが入っている。」
「あなたは、すぐにお腹を壊すから、整腸剤も買って来た。」
「横浜の八幡さまのお守り、入れておくから。」
今日子はまるで大沢の妻のように動いてくれた。
年は下でも、いつも姉さん女房のようだった。
この一週間、仕事をしながらずっと大沢の世話をしてくれた。
たぶん眠る時間など、ごくわずかだったに違いない。
けれど朝になると、明るい笑顔で「おはよう!」と言ってくれた。
荷物の準備が整うと、今日子は大沢に言った。
「ねえ・・・ この部屋の鍵を持って行って。」
大沢は言葉の意味がわからなかった。
「時差があるからたいへんだけれど
この鍵で、毎晩私の部屋に浸入して。
私、あなたを待っているわ。」
「毎晩、浸入していいの? 僕は、毎晩オオカミになっていいの?」
「そうよ。 でもニューヨークのオオカミは優しいの。
泣いている私の涙をそっと拭いてくれ、怒っている私の気持ちを静めてくれ
笑っている私と一緒に笑ってくれ、落ち込んでいる私を励ましてくれ
哀しみは二分の一に、喜びは二倍にしてくれるの。」
「赤頭巾ちゃんのオオカミとは、大違いだ。
僕は、正義の味方のオオカミなんだね。」
「この鍵で毎晩、私の心の扉を開いて、私の心にいつも触れて。」
「わかった。
ニューヨークのオフィスのランチタイムが、丁度日本の真夜中だ。
オオカミはランチもしないで、今日子のところに来るよ」
大沢の心を繋ぎとめようとする、今日子の女心がいじらしかった。
この鍵は、今日子の心の扉を開く鍵。
今日子のSOSを開く鍵。
大沢は大切に、背広の内ポケットに入れた。
横浜から成田までの道のりは、今日子が運転した。
今日子はいつも安全運転だった。
「ユーミンの曲をかけると寂しくなるから、FMでいい?」
ユーミンの曲には、思い出がたくさんありすぎた。
アルバムが出ると、真っ先に買って二人で聴いた。
車の中では、ほとんどユーミンしかかけなかった。
そして二人で、湘南や横須賀や茅ヶ崎に出かけた。
時には房総あたりまで車を走らせた。
代わる代わる車を運転して・・・・。
今日子をサイドシートに乗せると、今日子はナビゲータより詳しいナビをした。
今日子は、地図にない道を冒険しながら目的地へ行くのが好きだった。
守りの姿勢で、堅実な大沢に対して
今日子はいつも攻めの姿勢で、冒険好きだった。
大沢の不安をよそに
今日子はナビゲータを無視して、どんどん自分流のナビをしていった。
今日子といると、大沢はいつも多くの発見をした。
そんな前向きで、奔放な今日子がとても好きだった。
高速道路は渋滞もなく、車はお昼過ぎには成田に着いた。
二人は国際線の出発ロビーにいた。
「私、夏休みを取って、ニューヨークに行くわ。」
「待っているよ。 早く今日子にニューヨークを案内したい。
今日子と行きたいところがたくさんある。
ニューヨークの夜は、世界中のどこよりも、エキサイティングだ。」
「自由の女神、セントラル・パーク、マンハッタンの夜景。
ウエストサイドやイーストサイド・・・ 」
「ミッドタウンに、通称リップスティック・ビルと呼ばれるビルがある。
遠目に見ると、ビルが口紅の形をしている。
そこにとても美味しいレストランがる。」
「他にも素敵なカフェがたくさんある。
ニューヨーカーは、その時々のシーンに合わせて、カフェを利用する。
今日子に、そんなニューヨークを見せてやりたいよ。」
「夏の終わりには、きっとお休みを取るわ。
そして私、ニューヨークに行く。」
出発ロビーにアナウンスが流れた。
「15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
只今、搭乗手続き中。 出発の方は、お急ぎください。」
大沢は席を立った。
「お酒の飲み過ぎに気をつけて。」
「朝のコーヒー、ブラックはダメよ。」
「毎日、食事はきちんと取って。」
「どんなに帰宅が遅くても、シャワーは浴びてね。
きっとあなたの疲れを取ってくれる。」
「雨が三日以上降ったら、私たちのてるてる坊主を吊るして。」
今日子の口から止めどなく言葉が続いた。
「いつもメールして。」
「いつも私を想って。」
「いつも私を愛して。」
「I Love You と、いつも私に言って。」
今日子は大沢に向かって懇願した。
「わかった。 すべてわかった。 今日子の言う通りにするよ。」
今日子は目を潤ませた。
「私、泣いてなんかいない。」
精いっぱいの強がりを言った今日子の頬に、涙がこぼれ落ちた。
そして二人は、もう一度しっかりと抱擁して別れた。
今日子は展望デッキから、大沢の乗った飛行機を見送った。
飛行機はゆっくり滑走路を移動し始めた。
15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
定刻どおりの出発。
大沢を乗せた飛行機は、空の彼方へ消えて行った。
第9章へ 続く・・・