思い続けることで夢をかなえた人 稲盛和夫 (世のため人のため絵本シリーズ2) | |
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出版文化社 |
「世のため人のため絵本シリーズ」の第2弾として発売された、「思い続けることで夢をかなえた人 稲盛和夫」(加藤勝美, なりきよようこ/文、 櫻井さなえ/絵:文化出版社)。考えてみれば、日本の経済人で、子供向けの伝記や絵本に成りそうな人は少ない。すぐに思いつくのは、松下幸之助 さんと、本田宗一郎さんくらいである。今回、このお二人ではなく、稲盛さんが取り上げられたというのも、やはり、時代の流れというものが反映されているということだろうか。
この御三方には共通していることがある。皆、元々はものづくりに熟練した技術者だったということだ。日本は、ものづくりで生きていくしかない国である。そんな日本を代表する経営者としては、モノづくりを熟知している人こそ相応しい。その意味で、稲盛さんを取り上げているのは、ごく当然のことと思える。
しかし、本書の内容を詳しく読むと、いくつか気になる点がある。例えば、IBMから部品の注文を受けたときのこと。「2年あまりの間、お盆もお正月も休まず必死に働きました」とあるところだ。経営者が働くのは、ある意味当たり前だが、従業員まで同じように働かせていたのだろうか。もしそうなら、昔なら美談になるところだが、今の感覚では必ずしもそうはならない。ちゃんと「労働基準法」を守っていたのかと責められかねないところである。
次に、稲盛さんが再建に関わった日本航空での話。「日本航空の社員には「会社がつぶれた」という危機感がありません」と決めつけているが、果たして全員がそうだったのか。こう言い切る根拠はなにか。仮にそのような人が多かったとしても、どのような組織にも心ある人は居るものだ。そんな人がいなければ再建など出来る筈がない。すべてを十把一絡げに切り捨てるというのはどうだろうか。
そして、稲盛さん主催する「盛和塾」に全国から約9000人もの中小企業の社長が集まり、教えを受けることが、いかにも素晴らしいことのように書かれているところ。私は、これには逆に不安を覚える。経営とは、会社ごとに違うものだ。どのように経営していくかは、経営者が自分の頭で、死に物狂いで考えねばならないのである。人から習おうと安易に考えているのだとしたら、日本の将来は危うい。
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