先般伝七捕物帳のレビューを書いたが、アマゾンの青空文庫にはあれ1話しか見当たらなかったので。またまた、半七捕物帳に帰ってきた。半七捕物帳は明治になってから、半七老人が思い出話を語るという形式となっており、この話も例外ではない。また、最初はスリラー仕立てになっている場合が多いが、この話に限ってはそんなものは見られない。
ここで扱われる事件は、鷹匠が鷹を逃がしたというもの。鷹は庶民が飼うことはできず、鷹は将軍家のものだ。そしてそれを預かっているのが鷹匠である。身分は決して高くなかったが、将軍家の鷹を預かっているので威張り散らし、民衆からは嫌われていた。その鷹匠のひとり、三井金之助が、お鷹馴らしに野外に出て品川の丸屋という遊女屋へ泊った時の事。金之助を接待したお八重という抱妓は、金之助の人柄が案外良かったことからすっかり仲良くなり、朝方いちゃいちゃしていた。それに驚いた鷹が逃げ出したという訳である。
事件が公になれば、当事者は切腹。死罪となるものも出る。なんとか、事を穏便に収めようとする半七親分も珍しい。この話では、殺人事件のようなものは起こらない。半七捕物帳の他の話を考えると異色と言っていいかもしれない。最後は、半七親分の気風の良さが出ているかな。
☆☆☆