文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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半七捕物帳 21 蝶合戦

2023-04-03 13:25:42 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この話も半七捕物帳に収録されているものだ。他の作品と同じように、明治になって、半七老人が、語り手である「私」に、思い出語りをするという形式になっている。

 この話の冒頭にこんな文が出てくるのだが、それならお伊勢参りに行った人なんかは、もう江戸っ子ではないということかな(笑)。

<江戸っ子は他国の土を踏まないのを一種の誇りとしているので、大体に旅嫌いである>

 それはさておき、今でも変な宗教がはびこったりしているが、江戸時代にも、しばしばばやり神というものが現れた。当時の人々は迷信深かったので、あの神様や仏様はご利益があるという噂が広がれば、それを求めて参拝者がひきもきらずという状態になったらしい。まあ、その根底には、自分がご利益にあやかりたいという欲があったのだが。

 ところでタイトルにある蝶合戦だが、他にも雀合戦、蛙合戦、蛍合戦というのがあるらしい。蝶の場合は詳細に書いてあり、これから判断すると、別に蝶が合戦をする訳ではなく、話を読むと白い蝶の大量発生のことらしい。しかし、誰かが「合戦」というと、当時の人はそう呼ぶようになるのだろう。

 小さな生物は、なぜか大量に発生することがある。代表的なのはバッタが大量発生する蝗害だろう。私も子供のころ、ノコギリカミキリの大量発生を見たことがある。

 先にも行ったが、昔の人は迷信深い。だから蝶合戦のような常には見られないような現象が生じると、大災厄の前触れではないかと思ってしまう。しかし、終わってみると、まったく蝶合戦は関係がなく、単に破戒坊主と、色ボケした女たちの話だった。
☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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