タイトルにある真序とは真の順序という意味である。百人一首を正しい順番順に並べれば、全体で壮大な100行詩を形作っている。前半の60首と後半の40首では主題が変わっており、前者は遠島にある天皇を思い、後者は式子内親王に対する追慕を表しているというのが著者の主張である。
そうなのかと思って改めて各歌を読んでみると、正直良く分からないと言ったところだ。確かに並べられた歌を読むと同じような題材や言葉を扱ったものが多い。しかし百人一首の時代は歌は重要な教養であった。本歌取りといったような技法もあり、古今の歌に通じていることは、やんごとない人達にとっては大前提である。だから、同じような題材や言葉が出てきてもそれほど不思議ではないだろう。
著者の略歴を見ると、学科こそ違うが、同じ大学・大学院の学部、研究科の大先輩である。確かにむやみやたらと覚えるよりは、何らかの法則性を見出して覚えた方が覚えやすいのは確かだ。だから著者の方法はいかにも理系人らしいと思った。実は私も高校時代は百人一首を全部覚えていたはずだが、今読み返してみると、こんな歌あったかなあと思うものもけっこうある。もし、当時このような方法を知っていたら、今でもすべてを覚えていたのだろうか。
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