![]() | コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング |
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ぱる出版 |
2010年に、岩崎夏海氏の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社)が大ヒットした。野球部の女子マネージャーが、ドラッカーのマネジメント」に書かれていることを、野球部のマネジメントに応用して、甲子園を目指というものだ。これのマーケティング版がこの、「コトラーが教えてくれたこと 女子大生バンドが実践したマーケティング」(西内啓、福吉潤:ぱる出版)である。ドラッカーが経営の神様だとすると、タイトルにあるコトラーはマーケティングの神様だ。本書は、マーケティングに焦点を絞ることで、「もしドラ」との差異化を図っている。
この本も「もしドラ」と同様、小説仕立てとなっている。主人公は、志村絢という、バンドをやっている女子大生。初めてのライブが、あまりにも盛り上がらかったので、ショックを受けていたのだが、大学のマーケッティング論講師の碇八千代から指導を受け、マーケティング手法を使って、最高に盛り上がるライブを目指すことになる。
まず、マーケティングとは何か。本書はこれを、「可能な限り顧客と社会を幸せにする優れた価値を提供するためのプロセス」(p23)だと言っている。 そして、ビジョンとミッションを明確にすること、市場をセグメンテーション化してどこにターゲティングするか、SWOT分析やマーケティングの3i、4P、計画と実行・評価といった具体的なマーケティングのプロセスが描かれていく。
このように、マーケティングとは、かなり幅広い活動プロセスだ。しかし、マーケティング=プロモーションという誤解もけっこうあるようだ。「プロモーションがすなわちマーケティングだなんて、できの悪いビジネスマンがしがちな、一番ベタな勘違いじゃないの」(p13)と、これは同じように勘違いしていた絢に対する八千代の言葉だが、なかなか手厳しい。
小説仕立てなので、絢が八千代から指導を受け、次第に問題の解決に近付いているプロセスを楽しみながら、読者は具体的なマーケティングのエッセンスを学ぶことができるだろう。また、各章末に重要な用語の解説も掲載されているので、これも忘れず熟読したい。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。