文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:イシュタルの娘 ー小野於通伝ー(1)

2016-08-09 08:22:17 | 書評:その他
イシュタルの娘~小野於通伝~(1) (BE・LOVEコミックス)
クリエーター情報なし
講談社

・大和和紀

 小野於通は、安土桃山時代から江戸時代にかけて実在した謎の多い才女である。本書はその於通の生涯を描いた歴史漫画だ。作者は「はいからさんが通る」などでも知られる大和和紀。現在までに13巻が発行されているがこれはその1巻目に当たる。

 実際の於通は、詩歌を初めとした諸芸に優れた教養豊かな女性で、特にその書はお通流として桃山文化を象徴するものと評価されているようだ。この作品では、これに加えて、於通は、アメノウズメ神の血を引くものとして、人に見えないものが見える「天眼」を持つ女性としても描かれている。

 例えば、織田信長の後ろには強大な黒龍が見え、羽柴秀吉や徳川家康は光に包まれているのが見える。明智光秀を見たときには、安土城が燃える幻影を見てしまうのだ。

 於通は、激動の時代に翻弄されながらも人の縁に恵まれていたようだ。織田信長は家臣には厳しかったが於通には優しかった。光秀の反乱で父と兄を失い、母と共に京の九条稙道を頼るのだが、稙道にはその才を気に入られ、諸芸・教養に磨きをかけることになる。その教養は、当代一の粋人細川幽斎にも認められ、女性初の文人墨客として公家社会に受け入れられるまでになるのだ。

 この他、於通が生涯にわたって付き合うことになる寛永の三筆の一人近衛信尹(出会った当時は信基)や、飯綱天領での真田信幸、幸村兄弟との出会いなど、当時の有名人がどんどん於通と関わってくる。こんな物語が面白くないわけがない。

 まだ1巻目だが、謎多き女性をモチーフに、これだけの物語を紡ぎだした作者の想像力には感心する。しかし、むしろ謎が多いからこそ、作者が想像力を働かせる余地が大きくなるのかもしれない。この巻は、於通にアメノウズメ神が降り、乱世が終わることを告げて終わっているのだが、続きが気になる。しかし現在まで13巻もあるので、積読の山を考えると、なかなか直ぐに読むこともできない。また折を見て、少しずつ読んでいこうと思う。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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