文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:工学部ヒラノ教授の事件ファイル

2016-02-13 08:00:50 | 書評:学術教養(科学・工学)
工学部ヒラノ教授の事件ファイル (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・今野浩


 数理計画法の権威で、我が国における金融工学の草分けでもある今野浩さんが描いた工学部大学教授の裏事件ファイル。当事者でないと書けないようなヘンな話が満載だ。例えば、怪我や病気で、急に予定した出張に行けなくなった時、出張取消手続きがとんでもなく大変(始末書を出さなければならないこともあり)なため、自宅に潜伏していたという事件。バデュー大学に客員准教授として招かれた際に体験した、女学生たちによるハニートラップ事件等々。

 今はどうなのかは分らないが、今野さんが現役の頃の国立大学にはおかしな規則が多かったようだ。例えば、京都での学会へ日帰り出張した際の交通費の清算。証票書類として、学会の領収証も新幹線の領収証もだめだが、キオスクで何か買って領収証をとればいいという。だから今野さんは、京都のキオスクでおにぎりを買っていたという。また、外国へ派遣された際には、プライベートでも他の国へ行くと処罰対象になったらしい。このほか単年度会計で使い道も制限されるため研究費もかなり使い勝手が悪かったようだ。

 特に面白かったのは、ご当人の姉と名乗る女性の色香と奨学寄付金の申し出に目が眩んで、留学生を受け入れた話。これが箸にも棒にもかからないような問題児だったため研究室の面々も散々な被害を受けたようだ。この他、アメリカの大学教授との待遇の違いや論文掲載におけるレフリーとの闘いの話などもなかなか興味深い。

 全体としてはユーモラスな筆致で書かれているが、中には結構生臭い話も入っている。もう時効になったような話ばかりだが、やはり時代的な背景というのも大きかったのだろうと思う。しかし今野さんもこれを書くにはかなりの勇気がいったのではないだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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