文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

タバコ税率引き上げについての補足

2009-12-05 09:58:11 | オピニオン
 今日配信のフジサンケイ ビジネスアイのニュースによれば、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)ジャパンのナレッシュ・セティ社長は、政府が2010年度税制改正で、たばこ税率を1本当たり2~4円程度引き上げる方向で調整していることについて「大幅な増税で、海外から粗悪で割安な偽造品や密輸品が流入しかねない」と述べ、急激な引き上げを牽制(けんせい)したとのことである。

 これが、大幅な増税だというのは、まったくナンセンスな主張に過ぎないことは、ひとつ前にこのブログに掲載した記事の通りである。

 彼は、「大幅な増税で、海外から粗悪で割安な偽造品や密輸品が流入しかねない」と主張しているが、誰が困るのか。粗悪なタバコと言うが、タバコそのものが健康に悪いので、嫌煙家の目には今のタバコと50歩100歩に思える。粗悪でタバコの葉の量が少ないタバコが出回れば、かえって健康にいいくらいだろう。お茶っ葉でも混ぜてくれれば、今のタバコよりはずっと健康的だ。密輸品については、取り締まりを強化し、目の玉が飛び出るような課徴金をかければ、かえって国庫収入は増えるかもしれない。結局一番困るのはタバコ業者であり、自分たちの利益を守ろうとしているだけではないのか。

 課徴金が高くなれば、密輸をする危険を冒すより、シケモク拾いをする人間が増えるだろうし、タバコも、途中で消したものにまた火をつけて最後まで吸うようになるだろう。どうしてもフィルター部分の問題は残るのだが、いまより街はきれいになる可能性が高い。タバコの煙が少なくなれば、国民全体も健康になり、火災の心配も少なくなるので、いいことだらけである。

 タバコはベランダで吸っても、しばらくは肺の中に煙がたまっている。だから、タバコを吸う人間がいる家では、いくら家の外で吸っても、家族の血中ニコチン濃度が高いという。将来的にはタバコは全廃するのが理想的だが、当面は大幅増税で税収を確保しながら、少しでも煙の量を減らすべきだろう。

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なぜタバコの大幅増税を見送るのか?

2009-12-05 08:36:59 | 経済学
 政府は昨日、2010年税制改革で、消費の落ち込みによる税減収を避けるために、厚生労働省が求めた大幅引き上げを見送り1本3円前後の引き上げ方向で調整に入ったとのことだ。

 しかし、本当に値上げをすると税収が落ち込むのだろうか。少し検討してみよう。

 価格値上げと消費量の減少の関係は、価格弾力性で表せる。ここで、消費量の変化率を⊿y、価格の変化率を⊿xとすれば、価格弾力性eは、次のように表せる。

  e=-⊿y/⊿x 

 ∴⊿y=-e⊿x

  ⊿y=(y-y0)/y0 、 ⊿x=(x-x0)/x0 (y0、x0は、y、xの現在の値)なので、これを代入して整理すると次式となる。

 y=ey0(1-x/x0)+y0 ・・・ (1)


 また、売り上げの増加分をzとすれば、

 z=xy-x0y0 ・・・ (2)

 である。


 (1)式を(2)式に代入して整理すれば、次式となる。

 z=-(ey0/x0)x^2+(1+e)y0x-x0y0 ・・・(3)


 zは、xに関する二次関数なので、zが最大値をとるxの値は、中学校の数学でも解けるが、ここでは、zをxで微分してそれを0とおくと、

 dz/dx=-2(ey0/x0)x+(1+e)y0=0

であるから、結局、

 x=x0×(1+e)/(2e) ・・・(4)

となる。

 (4)式を見ると

 (1+e)/(2e)>1 ・・・ (5)

ならば、x0<xでzは最大値をとるため、値上げをすると売り上げが増え、今より税収は増えることとなる。e≧0であることに注意して、(5)式を書きかえれば、

 1>e≧0 ・・・(6)

が、値上げをして、売り上げが増える条件である。

 さて、ここで問題になるのは、価格弾力性の実際の値である。上の考察では、簡単のために、eは定数と仮定している。実際には、価格が上がるにつれ、消費量の落ち込みは、大きくなると考えるのが自然なのだが、ここでは大体の感じが分かればいいので定数としておく。

 タバコのように、習慣性のあるものは、価格弾力性は小さいと考えらるが、ネットで調べるてみると0.2~0.7位までの幅がある。

 e=0.2の場合(4)式は、

 x=3x0

となり、タバコの価格が今の3倍、すなわち900円になれば、もっとも売り上げが増えることになる。

 e=0.7の場合(4)式は、

 x=1.21x0

となり、タバコ価格が今の1.21倍になったときに、売り上げが最大となる。この値だと、大体今考えられているように1本3円程度の値上げとなるのだが、e=0.7というのは、タバコの価格弾力性が結構大きい場合である。だが、タバコのように常習性のあるものは、値上げ幅が相当大きくないと、それだけの価格弾力性があるというのは考えにくいだろう。

 注意すべきは、上記の議論は、どこで、売り上げが最大となるかについて述べているということである。単に今より売り上げを増やせばよいのなら、1>eが確保できれば良いので、少々増税しても、税収は今より増えることになる。 

 以上の考察を踏まえると、いずれにしても、3円前後という上げ幅はあまりにも小さいのではないだろうかと思う。まだまだ値上げしても売り上げの減少など起りそうにない。嫌煙家の立場からは、もっと大幅に増税することにより、世の中からタバコの煙を少しでも減らすとともに、タバコの吸い切りやシケモク拾いが一般的になることにより、街の美観が保たれるようになることを願っているのだが。


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貨幣供給よりは貨幣需要の創出策が必要

2009-12-03 19:44:44 | 経済学
 日銀は昨日5兆9000億円、今日も5兆3600億円と、短期金融市場に大量の通貨供給を行った。やや長めの期間の金利低下を促して景気を下支えする方針のようだが、どの程度の効果があるかは疑問である。

 今は金利はほぼ極限まで低下しており、「流動性の罠」とも言える状態になっているのではないか。このような中で、いくら金融市場に通貨を供給しても、実態経済は動かず、行き場を失った通貨は投機に回ってしまいかねない。

 経済学には、「セイの法則」というのがある。「供給はそれ自体の需要を創造する」というものだ。しかし、これが変だというのは素人でも分かるだろう。いくら供給しても需要が無ければ無駄である。おなかいっぱいになっているのに、どんどん料理を出されても食べられないのと同じことだ。有効需要の原理により、このセイの法則を否定したのがケインズであった。

 本日財務省が発表した7~9月法人企業統計によれば、設備投資額は前年同期より24.8%減であり、四半期ベースで10期連続であり、減少率は過去最悪だそうだ。実体経済がこれでは、いくら通貨の供給をしても行き場が無い。

 マーケティングの考え方に、プッシュ戦略とプル戦略というものがある。金融緩和は例えて言えばプッシュ戦略に当たるであろう。金融システムの重要さを否定するつもりは無いし、あえて通貨供給によりプッシュすることが必要である場合もあるだろう。しかし、金融だけで経済の回復はできない。今本当に必要なのはプル戦略の方なのだ。将来性のある分野で実体経済の方を刺激して、貨幣需要を創出する方策が何よりも必要なのである。


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