・朝倉千恵子
本書の性格を一言で表せば、女性社員にとっては会社でいかに認められていくかという「行動マニュアル」であり、男性社員にとっては、「女性社員の取扱説明書」といったところだろうか。
誤解を招かないように少し補足すれば、女性にとっては、どうすれば仕事で成果を出して周りから認められるかということであり、男性にとっては、女性の特質というものをよく理解して、どのようにすれば、その能力を十分に発揮してもらえるかということだろう。
私は元々は技術畑なので、部下に女性を持ったことは数回しかないし、上司が女性だったことは一度もない。もっと女性も技術畑に進出して欲しいと思うのだが、敬遠されているようなのは非常に残念なことだ。私は工学部で電気工学を専攻したが、女性の学生はなんと0人。ずっとこの状態が続いていた。
高校の時も、田舎高校ながら3年の時には、一応文理でクラス分けがされていたが、わずか1クラス40人しかいない理系クラスに、女子はわずかに3人しか進まなかった。もっと女子が技術畑に進んでくれればいいと思うし、この手の本を読むと、大抵は営業などの関係の話で、誰か女性のための技術関係の本を書いてくれないかなとも思ってしまう。
それはさておき、女性の部下を持った経験が少ない私にとっては、「うわー、めんどくさー!」というのが、本書を読んだ時の正直な感想かもしれない。別に男だろうが、女だろうが、ちゃんと仕事をしていれば、きちんと評価してきたつもりだが、本書を読むと男女には色々と違いがあるようだ。
そういえば、普段でも男女の違いを感じる場合がある。例えばテレビを視ていると、女性タレントが「これは女性にはうれしいですね」なんていうコメントを言ったりするところだ。金子みすゞも言っていたではないか。「みんな違って、みんないい」と。こういうのを目にすると「いつあんたは全女性の代表になったんだ?」と思ってしまう。男女限らず、人には色々な個性があり、違いがある。それにも関わらず、自分と同じことを人も思っていると思いがちなのは、女性に多いのではないだろうか。寡聞にして、男性タレントが「男性にはうれしいですね」なんて言っているのは聞いたことがない。
こういった過度の一般化の傾向は、本書中にも見られる。例えば女性は思ったことをストレートに伝えるという例として、講演会で、あまり態度の良くない女性から「今どきそんな長いスカート履いて講演している人なんていませんよ~」(p101)と言われたという例を挙げている。しかしこれは、その女性が単にあまり常識が無かったというだけで、女性全体のことにはならないのではないかと思う。
このような男女の特性の違いはおそらく存在するのだろうが、男女は基本的には対等のパートナーだ。例えばセクハラ問題などは、そのことを理解していないから起こるのではないだろうか。この基本を忘れなければ、男女関係なく気持ちよく働いていけるものと考えるのだが。
☆☆☆
※初出は、
「風竜胆の書評」です。