晴、17度、67%
30年近く自分で買ったことがないものがあります。その一つが日本茶です。海外に暮らしていると、日本からおみえになるお客様のお土産の筆頭はお茶でした。日系のデパートで売ってはいますが、軽くて嵩張らないお茶は持って来てくださる人にも便利です。ところがお土産ですからいただく日本茶は上等なものばかりでした。そんないいお茶ばかり飲んでいると口が肥えてしまいます。日本への引越しの荷物にもまだ封を切っていないいただきものの日本茶を入れました。主人が一人でお茶を淹れるとは思えません。
3年前、義父のお香典返しにデパートのお茶売り場に行きました。それ以外スーパーでもデパートでもお茶売り場をのぞいたことがありません。まだ封を切っていないお茶を見ながら、「これがなくなったらいよいよ自分でお茶を買わなくては。」と思ったのはつい先日のことです。そんな折、ポストに洒落たパッケージが入っていました。
京都の「一保堂」の包みです。開けずともお茶だとわかります。4月の終わりに気が伏せることがあった私は、茶摘みの時期が来たことも知りませんでした。中国でも茶摘みは日本とほぼ同じ頃です。「清明節」前後から茶摘みが始まります。紅茶もファーストフラッシュと呼ばれる春摘みが行われます。毎年茶摘みの季節はお茶への期待に胸を膨らませていました。
一保堂の包みからは新茶が出て来ました。新茶の贈り物です。立春から八十八夜、5月の2日に摘まれたお茶を飲むと無病息災と言われるのもどこの国でも同じです。そういえば日本に帰って来たのはこの立春でした。
「新茶」っていつまでのお茶を言うのかしらと思います。暑い時期になっても「新茶」の幟がお茶屋さんの前にあります。それにしても6月に入ってすぐに新茶を贈ってくださるその粋なこと。季節のご挨拶を新茶に代えて。
季節を大事にする日本ならではです。30年日本を離れていた私はすっかりそんな細やかな気持ちがなくなっているようです。季節の果物、季節のお野菜、お手紙を添えて季節のご挨拶です。