晴、26度、82%
香港に「白蘭」と呼ばれる高い木があります。3メートルほどの大木です。この大きな木には初夏から晩秋にかけて、白い小さな花が咲きます。細い筒状の蕾をつけて、日が昇るに従いその花を咲かせます。 高い木ですから、花姿を見ることは滅多にありません。「白蘭」の木の下を通ると、清々しい香りがします。その高い木を見上げても花は葉陰に隠れています。花を見ることなく下を通り過ぎてしまいます。早朝のまだ咲き切らぬ前の蕾をとって、その蕾だけを売る人もいます。香港のセントラル、蕾を3つ小さな袋に入れて売っているおじいさんをよく見かけました。いい香りです。買った人は耳に挟んだり、部屋に置いてその香りを楽しみます。
主人が香港から持ち帰るモモさんへのお土産は、この「白蘭」のアロマキャンドルです。帰ったその晩から家じゅうに甘い香りが立ち込めます。 THE CANDLE COMPANY HONG KONG のものです。アロマキャンドルは実際の「白蘭」の香りよりきつく感じますが、懐かしい香港の花の香りです。亜熱帯には温帯の日本よりにおいのある花が多いと思います。私たちが住んでいたあたりには3本の「白蘭」の木がありました。
1本はモスクの敷地内、ここまでくるとヒルサイドエスカレーターも人が少なくなります。セントラルよりも涼しいなと肌が感じます。エスカレーターの透明な屋根には夏中この「白蘭」の花びらが落ちています。
もう1本はコンダットロードの始まりのオーバーフロー脇にあります。高い木の周りには階段がありこの花の香りを感じながら歩きます。この階段のおかげで私は花姿を知ることができました。早朝の固い蕾をとっておくと昼過ぎには花開きます。
もう1本は、この階段を下りきった香港動物園の入り口にあります。一番高い木です。花姿を想像しながら高い木を見上げます。そしてこの根元はモモさんのおしっこの定位置でした。
3本の木は全部モモさんのお散歩のコースにあります。モモさんはよくお花をにおいました。この花も手にとってにおわせたことがあります。モモさんにとっても懐かしい花の香りに違いありません。主人は今回、「白蘭」の小さなティーライトのキャンドルも買ってきてくれました。キャンドルスタンドで灯します。
主人が香港に戻りました。帰った後もキャンドルに火を入れます。きっと主人は、「白蘭」の花や木を知らないと思います。しかも、我が家のすぐそばにあったことなどご存知ないはずです。花や木の名前を教えてもからきし覚えてくれません。お勧めのキャンドルを買ってきてくれたようです。モモさんも私も懐かしさに浸っています。