曇、27度、84%
アレッシーの振り子の置き時計を買ったのはもう24年も前のことです。建物のような形、針のブルーの色、置き時計なのに振り子がついています。アレッシーらしい遊び心がある時計です。クウォーツで電池で動きます。かすかにチクタクチクタクと生き物のように感じます。
20年を過ぎた頃から、振り子の動きに元気がなくなりました。よく見れば動いてるなと思いますが、小さな揺れです。そのうち、急に止まったり、時間の遅れが出始めました。その度に屋根の部分からムーブメントを取り出して微調整します。ご機嫌をとりつつ励まします。もちろん香港からの引越しの荷物には幾重にもパッキンをして持ち帰りました。
日本の家でも振り子は動かないものの正確に時を刻んでいました。ところがひと月ほど前から電池を新しくしても、私が微調整といってご機嫌を取っても、時間がズンズン遅れます。時計屋さんで修理してもらおうと、数件に持ち込みました。クウォーツのムーブメントを取り替えれば済むと言われます。ところが、日本のアレッシーではこの形の時計を扱っていないので、そのムーブメントが手に入らないそうです。日本のアレッシーにも問い合わせましたが、同じ答えです。
そんな折、並行輸入でこの時計を販売している店を見つけます。思い切って新しい同じ形の時計を求めました。やって来た新しい時計は20数年前の古いものと同じく元気に振り子を揺らします。 ところが耳を澄ましても、あのムーブメントの動く音は聞こえません。屋根の部分を外してゆっくりとムーブメントを取り出しました。古い方のムーブメントは、ドイツ製です。新しい方は中国製でした。20数年の時の流れを感じます。
古い時計は正確な時間を刻みませんがゆっくりと動いています。我が家の香港での生活を共にして来た古い時計です。二つの時計を見比べていると、新しい元気のいい時計はココさんに見えて来ます。古いのんびり時計はモモさんに見えて来ます。飛ぶように走って散歩をするココさん。病気で後ろ足が痛くてもバギーから降りて散歩をしたもモモさんの足取りは、古い時計の振り子のように感じます。
時計は正確さが肝心です。座敷のモモさんの写真のすぐそばには、新しいココ時計。音もせず元気に時を知らせてくれます。古いモモ時計は、本棚の一角に場所を作りました。時は正確ではありませんが動いています。そして、本箱のガラス戸を開けるとドイツ製のクウォーツの音がします。
座敷には同じ形の時計が二つ。椅子に座って二つの時計を愛おしく感じます。