雨、16度、92%
帰国して間もない頃でした。黒胡椒の粒が切れました。近くのスーパーを探しますが見つかりません。仕方なくデパートまで粒胡椒を買いに出かけました。胡椒を粒のまま使うようになったのはずいぶん昔のことです。おそらく香港に行く前、30年以上前からです。細かくされた胡椒を使うのが当たり前の頃です。当時は白胡椒と黒胡椒のみを使っていました。白胡椒はオールマイティーに使えます。ペッパーミルの力加減で胡椒は荒くも細かくもできます。挽きたての胡椒は香りの立ち方が違います。
そのうち、胡椒の種類が増えました。白黒に加えて、グリーンとピンクの胡椒です。 胡椒はまだ実が青い頃獲ると緑胡椒、若い胡椒です。そしてよく熟れた胡椒を乾燥させると黒胡椒。この黒胡椒の皮を剥くと白胡椒。ピンクの胡椒は、胡椒と似ていますがコショウボクと言われる木になる実だそうです。かすかに胡椒の匂いがしますが、ベリーの甘い香りも併せ持ちます。
以前はお肉やお魚を焼く前に、ゴリゴリと胡椒を挽きました。そのうち、食べる直前にもゴリゴリするようになりました。ピリッとくる辛味のためではありません。胡椒の香りをいただくためです。そして粒のまま使うことも増えました。ピクルス液に粒のまま入れます。じんわりと辛味が出ます。ピンクや緑はテリーヌに色のアクセントに入れます。スープにも粒のまま入れます。
粒胡椒を4色、スープに入れて最後には一粒一粒を味わいます。緑の胡椒は辛くはありません。香りが澄んでいます。若い胡椒です。黒胡椒はいっぺんに香りが弾けます。白胡椒は穏やかな辛味と香りです。ピンクの胡椒は辛味よりもベリーを思い起こさせる軽やかさがあります。夏に胡椒のスープを飲むと暑気払いになります。冬に胡椒のスープを飲むと体の芯が温まります。
肉の臭みや雑菌予防に使われ始めた胡椒です。粒のままの胡椒、荒く挽いた胡椒、細かく挽いた胡椒、それぞれに香りの立ち方が違います。胡椒を挽く手間など大したことではありません。粒胡椒を味わってみてください。