チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

岸田劉生随筆集

2018年05月10日 | 

晴、11度、70%

 香港から持ち帰った本は3分の1ほどに数を減らしました。30年間も同じ土地で暮らしましたから自然と本も溜まります。整理するのに随分と勇気がいりました。また読むだろう本が残る一番条件です。持ち帰った本はやはり時折広げます。探しても見つからない本は始末してしまった本です。文庫本を買わなくなって久しくなりますが、1冊真新しく見える本があるのが気になっていました。「岸田劉生随筆集」です。開けてみると読んだ記憶がありません。まとまった雨の合間合間で読み進めました。

 岸田劉生、洋画家です。ご自分のお嬢さんを描き続けた「麗子像」が有名です。画家が書く本とはと思い手に取ったのかもしれません。あちこちに掲載された文を寄せ集めた本です。出だしが明治の終わりから大正期の銀座の話です。銀座生まれの岸田劉生です。新聞連載のこの「新古細句銀座通」を読み進めていると画家が書いたものだとは思われない文章の面白みでずんずん読み進みます。そのあと画論が展開されます。洋画論、中国の南画、北画、果ては洋画にまで及びます。現代の文章とは違う書き言葉ですが、それさえも懐かしさを覚えます。

 今も画家でありながら本を書く人、作家でありながら絵を描く人、才溢れる方がいますが、時代もあったのか岸田劉生の二つの才能はケバくありません。おっとりとしています。

 実はこの劉生の本に並んで、先日訪れた鎌倉の鏑木清方の文庫本がありました。 数年思い続けてやっと訪ねることができた鏑木清方の美術館。ところがどうして日本画の鏑木清方を知るに至ったかを思い出せないでいました。この2冊の本を見た途端、「あっ、そうだった。」「鏑木清方随筆集」を読んだのが清方を知るきっかけでした。続いて「明治の東京」を読んだに違いありません。「鏑木清方」を作家と捉えて知ったのです。このあとやっと古本屋で手に入れた清方の「こしかたの記」2冊。画家の書いた本です。清方の文章は流れるように進みます。そして、劉生同様、2つの才能がどこかで一つになるのを感じます。絵画に見られる筆致は、人柄を表すものでしょうか。

 画家の書いた本は読みたいと手に取りますが、作家の描いた絵をわざわざ観に行こうとは思いません。なぜかしら。

コメント
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