晴、19度、69%
虫のさなぎのような穂がついた「小判草」という草があります。小判と言われれば納得しますが、真っ先に思い浮かべるのは虫のさなぎです。その「小判草」が一面に生えている土地を毎夏通りました。ひと夏に幾度か歩くこともありました。香港の西北、「西貢」の海辺の道です。この道で人に会うことは滅多にありませんでした。歩いているのは主人と私の二人です。
「小判草」の生えている土地の向こうには大きなバナナの木が数本。海にはマングローブが生えていました。夏の暑い中、この道を歩くと決まると「小判草」を見られると一人で喜びました。一面に生えている「小判草」、海風に吹かれてさなぎのような穂が揺れます。まだ私は40代でした。心の中に色んなモヤモヤを抱えて生きている頃でした。
雨上がりの夕方のお散歩、空も空気もきれいに感じます。道端の雑草も生き返ったようです。ココさんがクンクンと匂った先に「小判草」が数本。たった数本です。急に一面「小判草」の生えていた場所を思い出しました。懐かしさにかがんで「小判草」を眺めます。一度行き過ぎたのですが、引き返して小判草を摘みました。家に帰る途中、「どくだみ」がいっぱいの空き地を通ります。白い花をつけたどくだみです。どくだみも2本摘みました。
玄関を開ける前から、「小判草」と「どくだみ」を挿す花器は決まっていました。本来は蚊取り線香受けです。この淡いピンクが好きで、一度花器に使ってみたいと思っていました。床の間にふさわしい花ではありません。小ぶりな花器にうつむく「小判草」、天を指す「どくだみ」の花。いい景色ができました。蚊取り線香受けを作って贈ってくれた友人もこんな私の使い方を許してくれると思います。